文春オンライン

ゴーン逮捕・逃亡 「失敗は絶対許されない」伝説の特捜検事が教える、捜査の3つのポイント

ゴーン氏の保釈はなぜあれほどまでに早かったのか

note

ゴーン氏の保釈はなぜあれほどまでに早かったのか

鎌田 逮捕から年が明けた2019年3月と4月に裁判所が保釈を認めました。保釈のスピードはいかがですか?

熊崎 僕らの時代だと、こんなに早くには認めなかったでしょうね。

 ただあの状況下で、そのタイミングでたぶんゴーン氏は保釈になるだろうと思ってはいました。ゴーン氏夫妻は資金の流れ等に関連があると指摘されていたが、生活の中で夫婦が接触するのに、裁判所の許可を得なければならないのかと疑問も寄せられていた。

ADVERTISEMENT

2019年3月、保釈され、東京拘置所から作業員姿のカムフラージュで出てきたゴーン元会長の姿は日本中の話題に ©時事通信社

 細かい保釈条件は、比較的早期の保釈との関係で、ゴーン氏に対する証拠隠滅を防ぐための措置です。保釈条件とされた、住居の出入り口への監視カメラ設置やインターネットの接続禁止などは、弁護側が保釈を取るための裁判所説得の「新案」だったようです。実際に証拠隠滅とかを防ぐ実効性があるのか、他方において保釈しながらあんなに監視していいのかという問題は残りましたね。

鎌田 この事件は、日本の司法制度において長期勾留の問題があるとか、司法取引制度、フランスとの国家関係などについて、これまで経験したことのない異質な指摘や批判が出ました。検察は適正な捜査を貫いているはずですが、司法取引の裏側、勾留や釈放の経緯についても公判で明らかになるでしょう。

熊崎勝彦
1942年岐阜県生まれ。熊崎勝彦綜合法律事務所所長弁護士。72年に検事任官(24期)。96年東京地方検察庁特捜部長、2004年最高検察庁公安部長等を歴任し、同年に退官、弁護士に。東京地検特捜部勤務が長く、在籍時には政官財界を巻き込んだ贈収賄事件、金丸信元自民党副総裁の巨額脱税、大手銀行・証券会社による総会屋への利益供与、大蔵省汚職などの特殊重大事件を手がけた。退官後は、日本プロ野球コミッショナー・同顧問を歴任した他、大学客員教授・企業社外役員・不祥事を起こした企業の調査委員長を務める。テレビ解説員としても活躍。13年瑞宝重光章受章。19年WBSC(世界野球ソフトボール連盟)から名誉勲章を受章。

鎌田靖
1957年福岡県生まれ。ジャーナリスト。元NHK解説副委員長。NHK「週刊こどもニュース」で池上彰の後任として、2代目お父さん役を務めた。報道局社会部、司法キャップ、NHKスペシャル「シリーズ東日本大震災」「追跡!A to Z」キャスターなどを歴任。2017年退局後、テレビ東京「未来世紀ジパング」ナビゲーター等を務める。現在TBS「ひるおび!」コメンテーターとして活躍中。

ゴーン逮捕・逃亡 「失敗は絶対許されない」伝説の特捜検事が教える、捜査の3つのポイント

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー