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「あなたのその髪のウェーブは、天然?」

 ネイサンの早口のおかげで、マイケルが戻ってくる前に予定した質問は一通り終わっていた。

「最後に一つ、くだらないこと聞いてもいいかしら」

「何でもどうぞ」

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「あなたのその髪のウェーブは、天然?」

 ネイサンの髪は、まるでセットされたリーゼントのようにくりくりである。天然ならばアジア人の髪質には珍しいけれど、ネイサンがカーラーを巻いてヘアサロンの椅子に座っている姿はどうしても想像できない。

 

「そうなんだよ! ぼくの父親も母親も髪はまっすぐなのに。でも兄の1人も天然のウェーブがあるから、隔世遺伝なのかも」

 ネイサンが、笑いながらそう答えた。5人きょうだいの末っ子で、姉と兄がそれぞれ2人ずついるという。きっと明るい家庭で、可愛がられながら育ったのだろう。

「いやー、こんなゴミ箱の横しか場所がなくてゴメンね」

 そう言いながら、制限時間が少しだけ過ぎたところでマイケルが戻ってきた。

「いいえ、おかげさまで貴重な話がたくさん聞けたわ」

◆◆◆

出典:「文藝春秋」2月号

 ネイサン・チェンの独占インタビュー「羽生結弦が僕を高みに連れていく」は「文藝春秋」2月号および「文藝春秋digital」に掲載されている。

文藝春秋

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羽生結弦が僕を高みに連れていく