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「こんなところでごめんなさいね」
「ノープロブレム」と、ちょっといたずらっ子のような顔で、にやっと笑いながら答えたネイサン。こうして巨大なゴミ箱の横で、世界チャンピオンのインタビューが始まった。
インタビュー中に感じた“頭の回転の速さ”
これまで何度か書いてきたことだが、ネイサンの英語は半端ではない早口で、アメリカに移住してすでに40年以上になる筆者でも、時々聞き返したくなる。取材には英語のトランスクリプションが出る録音アプリを使っているが、そのアプリでも彼の早口にはついていけず、一文で単語を1つや2つは落とす。
「えーと」「あのー」にあたるような、英語でverbal pauseと呼ばれる意味のない音が入らずに、まるで早口言葉のような速さで答えが整然と返ってくるのは、おそらく頭の回転が物凄く速く、また思考が整理されているからなのだろう。
そのおかげで同じ制限時間でも、他の選手の倍の内容が返ってくる。記者にとっては、ありがたい。ありがたーい選手である。
彼の滑りを見られるのは、おそらくあと2シーズンだけ
「(2022年)北京オリンピックが最終目標?」
そう聞くと、「今のところそのつもり。いずれ医学部を目指すことを考えると、現実的に言って競技スケートのトレーニングとの両立は難しいから」と答えた。
アイビーリーグの名門、イェール大学に入って2年目になるチェン。絵に描いたような文武両道なのに全く嫌味なところがないのは、彼の人徳としか言いようがない。この才能ある若者の滑りを大会で見ることができるのは、おそらくあとわずか2シーズンだけ。