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八木亜希子がフジテレビを辞めるきっかけになった、さりげない一言

“テレビっ子”八木亜希子が語るテレビのこと #3

「テレビはつまらない」「テレビ離れ」など、テレビにまつわる話にはネガティブなものが多い。

 しかし、いまなお、テレビは面白い!そんな話をテレビを愛する「テレビっ子」たちから聞いてみたいというシリーズ連載の4人目のゲストは、元フジテレビのアナウンサーで現在はフリーとして活躍する八木亜希子さん。

 報道や情報、音楽、トーク、バラエティ番組はもちろん、朝ドラや大河といったドラマまで、あらゆるジャンルのテレビ番組に出演している「テレビの申し子」と言っても過言でない存在です。

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 1回目2回目につづく最終回は、『あまちゃん』『真田丸』などで見せた女優としての活躍について、そしてテレビの現在と「これから」について語ってもらいました。

 

「のど自慢」の司会、小田切千アナウンサーが素晴らしいんです!

―― 今、テレビはどんなものを見ますか?

八木 どうしても報道や情報番組が多くなってしまうんですけど、最近、熱く語ってみんなに驚かれたのは『NHKのど自慢』ですね。

―― 『のど自慢』ですか! 

八木 ごく最近になって、『のど自慢』の素晴らしさを痛感しているんです。もともと主人が好きで、つられて見るようになったんですけど、主人は車で移動中とかも、『のど自慢』を音でかけてるんです。

―― そんなにお好きなんですか。

八木 当たり前なんですけど、走行中は画面が消えて音だけになる設定になってるんですけど、『のど自慢』がかかっていると、走行中に「うわ、この人うまい。かっこいい、ミスチル!」って思って、車が止まって画面が映ると、「あ……」みたいなことがあったりしてほのぼのする(笑)。私は最初、そういう面白がり方をしてたんです。でもそのうち家でも見るようになって。おじいちゃんがイントロですごく緊張して、「何番、○○」とかって言った後の、歌い始めるまでのあの時間が何とも言えない、みたいな。こんなことって最近あんまりテレビで見ない不思議な緊張感があるなあって。一緒に緊張感を共有する。あれをライブでやってることが素晴らしいと思うんですけど。

―― アナウンサーだから余計に難しさが分かるんじゃないですか?

八木 司会の小田切千さんが素晴らしいんです! あの番組をアナウンサーとして生で仕切る素晴らしさに「うわー、大変」と思いながら、そこをやっぱり見ちゃうんですよね。この間なんて、おばあちゃんが出てきてワーッて歌い上げた途中でカーンって(不合格の鐘が)鳴ったんです。それで千さんが駆け寄って、「おばあちゃん、鳴っちゃった~」って話しかけるんだけど、おばあちゃん気付かないで気持ちよさそうに歌い続けてるんです。そうしたら千さんが「んっ?」てなりながらも、止めずに肩を抱いて、そのうち拍子をとり始めるんですよ! 鐘が鳴ると生バンドは演奏やめるので、おばあちゃんはアカペラ状態なんですけど、最後の歌い終わりのフレーズまで行ったところで、またバンドがバーッと入ってきて、お客さんも手拍子して終わる。これ観てて、なんか感動して泣けちゃって……。やっぱり歳を取ったのかなって思ったんですけど(笑)。

「テレビに出て緊張する人」という原風景にほのぼの

―― いい場面ですねー。

八木 テレビに出てきて緊張している人たちの素朴さが素敵だなって思います。ホント日本のいろんないい原風景があって、なんかほのぼのするんですよね。

―― 「テレビに出て緊張する人」って、いまでは貴重な感じさえするかもしれません。

八木 あんまり最近いないじゃないですか。今の世代の子たちは、たぶん子供の時からホームビデオで育って、撮られることに慣れている人たちだから。

 私たちの頃って、まだホームビデオもあまりなかったから、自分を客観的に見ることがなかったんですよ。実際にテレビに出始めた頃は、自分の姿を見て「自分って変」って愕然としましたもん。初めてテープレコーダーで自分の声を聞いてビックリするみたいな感じで、テレビを見てビックリする。だから、当時は見ていてビックリする人が結構いたんですよ。自分たちを客観視してない人たちが出てくるから、「うわー、これ大丈夫? テレビに出て」みたいな。自分もそうだったんですけど、アナウンサーだってそういう状態から始まるんですよ。で、テレビのオンエアの中で育てられていくみたいなところがあって。ニュース番組の記者さんも、映ると傾いてるとか、しゃべり方に癖がある人とか結構いたんですよ。