『あまちゃん』『真田丸』『カルテット』に出演して
―― アナウンサー出身で演者として朝ドラも大河ドラマも出られているのは大変珍しいと思うんですけど。『あまちゃん』での陰のある「よしえさん」役も忘れられません。
八木 あの役柄はつらかったんですよ。失踪しちゃうお母さんで、ほとんどの場面でつらい顔してたり泣いたりとかして、追いつめられる役だから、よしえさんのことを思うと本当につらくて悲しい。息子役の(小池)徹平君から「親となじまないっていう設定だったから、最初は、撮影現場で待機しているときに八木さんとあんまりしゃべっちゃいけないと思ってたんです。大丈夫でした?」って優しく声をかけていただいたりしたこともありました。役作りのためにはそういうこともするんだなあ、なんて勉強になりました。
―― 『真田丸』では京の文化人ともいうべき女性、お通を演じられましたよね。
八木 大河は、そもそも時代劇も初めてだし、お着物の裾のさばき方とか立ち居振る舞いとかは、やっぱりすごく難しくて、そういうので精いっぱいでしたね。あと、京言葉もあったので。でも、待ち時間に方言の先生がピタッとくっ付いてくださって、何度も繰り返し練習させてくれたり。そういう意味では、大変なことはいくつかあったんですけど、みんなが、私がその場に安心して臨めるように精いっぱいやってくださるんですよ。それがすごくありがたくて。やっぱり私にとっては新しい世界だったので、新鮮なことがいっぱいあって、それはそれですごく学ぶことが多かったですね。
―― 最近では『カルテット』にもご出演されて。
八木 いやいや、素晴らしいドラマのなかで、私は「箸休め」みたいな存在として出させていただきましたので……。
―― 今後もどんどん女優としてのご活躍もされると思いますけど。
八木 「期待したい」って書いておいてください(笑)。人が言ってくれたらオファーが来るかもしれない。こればっかりは自分で手を挙げてもね。
―― しかも出られているのが、三谷幸喜さん、宮藤官九郎さん、坂元裕二さんとドラマファンが大好きな脚本家ばかり。そういう方々に愛されていてすごいなと思うんですけど。
八木 たまたまですけど、ホントありがたいですね。幸せなことですよね。
テレビがニュースをどう報道するか、混沌としている時代だと思う
―― 今の報道番組をご覧になられてどのように感じますか?
八木 今は毎日報道の現場にいるわけではないので、あくまで外側からの意見になってしまいますが、テレビがニュースをどう報道するかが、とっても難しい時代に入ったと思います。最近だとフェイクニュースが問題になっていますが、あれにより何が嘘で何が本当かをみんなが確信できる場所が実はないことに気づいてしまった。だから、個人個人の見たいものを見て、信じたいものを信じるということにどうしてもなっていく。それで自分で見つけられないニュースや、あるいは知りたくない事実に触れる機会って少なくなっていく気がするんです。フリーになってから『プライムニュース』(BSフジ)に関わりましたけど、そこでもテレビができる報道のかたちを模索しました。BSだから地上波とはまた別のことをやろう、たとえば地上波では聞けないくらいたっぷりとその人の話を聞こうみたいな形を探していました。
―― 現在はネットと放送がどう融合するかも議論されてきていますよね。
八木 そうですね。インターネットの時代になって、テレビがどういうかたちで存在していくかという部分で、過渡期だと思うんです。でも楽しいことも悲しいことも大変なことも含めていろんなことを得たい、知りたい、見たい、聞きたいっていう欲求は、人として変わらないと思うので、むしろ私はワクワクしてますけどね。一視聴者としても、どんなふうにこれからインターネットやテレビが変化していくんだろう、どんなかたちに変わっていくんだろうって。その時代その時代のベストがきっとあるはずだから。
今一番混沌として、みんなワーッてなってる時期だと思うんです。新しいものが生まれるときってそうじゃないですか。『めざましテレビ』だってものすごい混沌から生まれたんですし(笑)。だから、あと何年後か分からないけど、「これがあったか!」みたいなものが、出てくるのかなという感じもしますけどね。
―― そういう発明のような番組に八木さんが出られていたら最高ですね。
八木 いやいや、私は楽しく『のど自慢』を見てるおばあちゃんになります(笑)。
やぎ・あきこ/1988年早稲田大学文学部卒業、フジテレビに入社。「おはよう!ナイスデイ」「めざましテレビ」「スーパーニュース」「明石家サンタ」など、報道・バラエティほか様々な番組を担当。2000年3月にフジテレビを退社し、02年結婚、アメリカに渡り、07年に帰国。09年から「BSフジLIVEプライムニュース」でメインキャスターを担当した。女優として『あまちゃん』『真田丸』『カルテット』などに出演。映画『みんなのいえ』ではアカデミー新人俳優賞を受賞している。著書に『その気持ちを伝えるために』。
写真=榎本麻美/文藝春秋
ヘアメイク=井上まみ