物心ついた頃から「陰陽師」シリーズに親しみ、ひそかに夢枕さんを師匠として仰いできたという阿部さん。ファンタジー界のベテランと次世代エースによる、清々しい好奇心にあふれる対談の最終回です。
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女性は未だに謎?
阿部 夢枕さんの作品はたくさんメディアミックスされていますが、原作者としてどのように関わっていらっしゃるんですか?
夢枕 ほとんどの場合、来たものは断らず、あとは何も言わずにお任せするようにしています。でも、小説を書くのは孤独な作業なので、誰かとやる仕事って楽しいんだよね。僕は、最初の歌舞伎だけはこちらから持ち込みしたんです。イラストレーターの天野喜孝さんと編集者に誘われて坂東玉三郎さんの歌舞伎を観に行ったら素晴らしくて、これはぜひ舞台でやってもらいたいと、陰陽師を主役に「三国伝来玄象譚」という脚本を書いて玉三郎さんのところに持って行ったんです。今だったら無理だろうと思ってそんなことやらないんだけど、当時は僕も30代でしたからね。そうしたら、書き直してほしいといわれて、ということはやってもらえるんだなと、喜んで書き直して。台本のことなんか何も知らずに書いたので、玉三郎さんにはいろいろ教えてもらいました。たとえば、舞台上に三人いて、一人だけしばらく台詞がないと「こちらにいる役者の台詞がなくてかわいそうなので、きっかけをつくって引っ込めてあげてください」と教えてもらったり。
阿部 それは、実際に舞台の仕事をやってみないとわからないことですね。
もう一つ、お伺いしたいことが。先生は、女性の視点を書くときにどうされていますか?
夢枕 僕は女性が書けないんだよ……。想像して書くんだけど、それが外れてるっていう自覚はある。女性については未だに謎だね。今度、原稿に朱を入れて教えてほしい(笑)。
阿部 いえいえそんな! 私も最近、男性と女性のキャラクターを書き分けるのが難しいなと思っていて。
夢枕 不思議なことに、若い頃から老人は書けるんだけど、女性は難しいですね。未だに謎だけど、でも、分からないほうが書くときに楽しい。
阿部 先生が書かれる女性はとても美しいイメージがあったので、意外でした。
夢枕 それは、理想を書いちゃってるんだろうね。
阿部 私は男性の読者の方から「この作品に出てくる女性とは誰一人付き合いたくない」と言われたことがあります。
夢枕 誰も付き合えとは言ってないのに(笑)。
阿部 でも思わず、「確かにそうだな」と思いました(笑)。