Q 「冗談」と「失礼」の境目は?

「彼氏ができない」と悩んでいる女友達がいたので、誕生日プレゼントに恋愛指南本を渡しました。するととても嫌な顔をされました。どうやら私は彼女に失礼なことをしてしまったようです。半分冗談のノリで渡したのですが。「親しき仲にも礼儀あり」を犯してしまった気がして落ち込みます。「冗談」と「失礼」の見分け方は何かあるのでしょうか。(25歳・女性)

A 相手のことをじっくり、立体的に考えてみることが大切です。

「冗談」と「失礼」の境目ですか。とても難しいけど楽しいコミュニケーションのためには大事なお話だと思います。

 まず、その境目がどこにあるかというと、それは相手の心の中にあります。相手に対して起こした行動の評価は、それを受けた相手にしか判断できません。これが大前提です。

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 では、相手に対して行動を起こす時、どのように考えてその行動を選択するのでしょうか。それは「○○という行動を起こしたら、相手は△△という反応をするだろう」という予測のもとに行われます。例えば、ある人が相手を喜ばせたい場合はまず、「○○という行動を起こしたら、相手は喜びの反応をするだろう」となります。それから○○を考え、この人が「服装を褒める」ことを選択したとすると、「服装を褒めたら、相手は喜びの反応をするだろう」という方程式が出来上がります。大抵はこの段階で実際行動してみて、効果を期待しますね。

 でも、「この服、全然気に入ってないんだけど」と言う人もいます。喜んでくれると思いきや、がっかりされるという、まさかの失敗の可能性もあるわけです。この失敗の可能性をなるべく小さくするにはどうしたら良いのでしょうか。それは、出来上がった方程式に、今一度疑問符をつけてみることです。出来たてホヤホヤの方程式は、まだまだ、ひとりよがりな可能性もあるので、見直しをしてみるのです。

「服装を褒めたら、相手は喜びの反応をするだろうか?」

 これに対して、自信を持って「Yes!」と答えるためには、改めて相手の性格、考え方、気分などをよく検討してみる必要があります。最初にお話ししたように、行動の評価は相手が判断するわけですから、相手がどのような状態か、じっくり立体的に考えてみて行動を決定することが大事だと思います。これは、円滑なコミュニケーションのコツの一つであるとも言えます。

 今回の相談者さまの場合、「彼氏ができない」と悩んでいるお友達に、恋愛指南本を渡して「今さらベタすぎるわ!」といった感じのユーモアを提供しようと考えていたのだと思います。

 これは、勝手知ったる親しい仲でしか成立しない、「冗談」を使った「攻めた優しさ」とも言え、個人的には素敵な気遣いだと思います。でも、お友達にはとても嫌な顔をされてしまった、つまり予測が外れてしまいました。これは恐らく、相談者さまの予想以上に、「彼氏ができない」ことがお友達にとって繊細な問題だったからではないでしょうか。少なくともその時は、その問題を「冗談」にする気分ではなかったのでしょう。

 人は、性格も、考え方も皆違うし、気分に至っては常に変化しています。そして、「冗談」というのは何かを茶化している場合が多く、今回はそれが相手の方だったのです。茶化す相手に、茶化される準備や余裕がないと、それは「失礼」だと判断されてしまいます。いつもは「冗談」と受け取れる人でも、そういう気分でなければ評価は変わってしまうのです。

 ですので、「冗談」と「失礼」の見分け方があるとすれば、相手の性格、考え方、そしてその時の気分をなるべく詳細に、相手に半分憑依してみるくらいの感じで想像してみるしかないと思います。

 もしも、プレゼントを買ってしまっていても、いざ渡す時に場違いだと判断したら、とっさに「ごめん、これ渡すの今じゃないかもしれないんだけど」など、前置きをすることで気遣い自体は相手に伝わります。それだけでも「失礼」の成分は結構少なくなるかもしれません。

 コミュニケーションって、難しいですね。

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