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「30代前半でも早期退職を求められる」壮絶な日本企業の現場で起きていること

HRテックで人事評価がシビアになされるようになった結果……

2020/01/24

一番企業に利益をもたらすのは……

 中学受験も然りで、どこぞの開成学園の校長が偉そうなことを言っていますが、私が思うに国語算数理科社会どれも全部できてようやく偏差値75以上の良い中高一貫校という恵まれた環境に行けるのであって、ほっといても勉強のできる子の集まっている環境ならば校則がなくたって勝手にいい大学に入っていきます。

 しかし、個人のユニークな特性が求められるとか声高に言われ始めた昨今、国語算数理科社会のうち、例えば理科だけが抜群にできる子が、その才能を開かせるにはいばらの道を歩みます。IQの高いASD傾向(アスペルガー傾向含む)のある子が法律家や技術者になりやすいのも物事を突き詰めて考えて特徴のある知力のある子が生き残り戦略を考えた結果です。

©iStock.com

 また、中学高校で普通の成績を取る大多数の子どもたちは、内申書で縛られ、高い協調性を求められ、組織や集団の中で大過なく過ごすことで平均的な学力を備えて大学に進学していきます。

 いままで体育会系組織にいて問題のない平準化された新卒を求め続けてきた企業が、ここにきていきなり「特徴のある、優秀な学生が欲しい」と言い始めた理由は明らかで、人事データを突き詰めて分析してみると「性格的にも知識も偏った、一般的に見て変な(嫌な)やつ」が一番企業に利益をもたらしていることが分かってきたからです。

 イノベーションが大事だ、と言っても、普段からみんなと仲良く協調している人間から、誰かを真っ二つに傷つけるようなイノベーションが出てくる保証はありません。また、なけなしの金を払ってオンラインサロンに入って祭りを手伝うような知能の低い人も、イノベーションからは程遠い存在です。ある意味で、スティーブ・ジョブズのようにどこからどう見ても人格者とは言えない人がいろんな人をビュンビュン振り回しながら行うのがイノベーションである以上、それを求める日本社会の仕組みも教育の在り方も間違っていたと産業界がようやく気付いたのかもしれません。

将来、何が有利か分からない世の中で

 結果として、技術革新や企業の考えの変遷によって教育の現場がブンブン振り回され、学生も「この会社に入っておけば一生安泰」という黄金律もなくなったいま、手に職をつければ有利とばかりに理系のトップは医師になろうとして国公立医学部をみんな目指し、学力では戦えない子は相変わらず公務員になろうとします。社会や企業に余裕のあったころの窓際族Windows2000現象なんて、一過性のあだ花なんですよね。

 将来、何が有利か分からない世の中になっているからこそ、子どもたちが憧れる職業がユーチューバーになるのです。なんだよ、いまどき仕事でユーチューバーって。ユーチューバーが楽しいとか駄目な奴が言うことですよ。子どもが「ユーチューバーになりたい」というのは、昔私たちが「電車の運転手になりたい」「パン屋さんをやりたい」などとあどけない夢を言っては周りの大人から「ほかになりたいことはないのかよ」と白い目で見られた身近な大人だったというだけでなく、既存の医師、弁護士、企業家、政治家、技術者といった仕事が、未来の明るい確かな仕事とは子どもの目には映らないということなのでしょう。

 これをやっておけば大丈夫という確実なものを得られる何かを、親も学校も企業も指し示すことのできない社会になっているのだ、ということは、もっと広く知られていいと思うんですけどね。そういう事象への理解こそが、本来の「学力」だと思うので。

 ところで、ユーチューバーを始めてみたので、皆さん登録よろしくお願いします。

https://www.youtube.com/channel/UCYngjP_3hOC-yu2A077rKbQ

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※2020/01/24 7:45 一部加筆、修正を行いました。

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