昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2020/01/29

 早乙女研究所のゲッターチームの敵・百鬼帝国が、少年兵の地虫鬼(声・野沢雅子)を差し向けて来た。地虫鬼は幼いながら天才的頭脳の持ち主で、その戦略で宿敵ゲッターロボを追い詰める。そこで大いなる誤算が生じた。地虫鬼は、作戦に入る直前、早乙女博士(声・富田耕生)の息子・元気(声・菊池紘子)と束の間の交流を果たしていた。結果、非情になり切れなかった地虫鬼の作戦は失敗。銃殺されることに。死の間際、彼の脳裏をよぎるのは、元気やゲッターチームと過ごした、あの夏の日の楽しい想い出の数々。名優・野沢雅子による「今度、今度生まれ変わってくるときは、人間に生まれたい……そしたら、そしたら元気君に会える……」というセリフが観る者の胸をえぐって幕を閉じる。角の生えた姿とはいえ、少年が殺されて終わるラストはあまりにも重く衝撃的で、初鑑賞後しばし動けなかった。

『イナズマンF』最終回が収録されているDVDジャケット。

 この非人間的教育に洗脳された無垢なる存在が、真の人間性に目覚め、死と引き換えに人間性を取り戻す……というプロットは、特に70年代中盤に氏が好んで描いたもので、石ノ森章太郎原作の東映ヒーロー『イナズマンF』(74年)の最終回(第23話)でも描かれていた。“人間は凶悪な生き物”と愛娘のカレン(演・鳥居恵子)に教えていたラスボス・ガイゼル総統(演・安藤三男)。だが、イナズマン= 渡五郎(演・伴大介)と出会ったことでそれがウソだったことを知ったカレンはガイゼルを裏切り、実の父の手にかかってしまうという悲劇を迎える……。イナズマンの物語でありながら、ガイゼル総統父娘のストーリーとして幕を閉じたことに当時、驚いた。

海老天丼に教えられたこと

 ここから少々、氏との個人的なエピソードを交えさせていただく。上原氏とは、筆者が大学生のときにファンレターを出して以来の交流となった。初対面の際、氏は最寄駅にある蕎麦店・増田屋(調べたら今もご健在)に案内し、海老天3尾の乗った天丼をご馳走してくだすった。これはファンに対する上原氏の恒例の儀式だそうで、作家の切通理作氏も同様の洗礼を受けたという。若かったこともありペロリと平らげた私に氏は「これを全部食べられるうちは大丈夫。もっと勉強して社会に出てバリバリ働きなさい」と叱咤激励された。以後1年に1、2度の割合で、お会いしに伺ってはご馳走になり、いずれも完食していた(もちろんおごられに通っていた訳ではなく、当時氏が書かれていた『仮面ライダーBLACK』[87年]等々のお話を聞きに行っていたのだが)。

 後年、筆者が『70年代カルトTV図鑑』(文藝春秋)を上梓し、氏に献本がてらご挨拶に伺った際には「今日は君がご馳走してよ」と言われ、当然ご馳走させていただいた。そのとき氏が完食されたか否かは記憶に定かではないが、「君におごってもらう日が来て嬉しいよ」とのお言葉はしっかり覚えている。