「もともと他の人が言っていた手を指すのは好きではないタイプです。将棋ソフトが見つけた手はなおさら指す気になりません」
インタビューで、きっぱり言い切ったのは佐藤康光氏。タイトル通算13期、順位戦A級通算23期、竜王戦1組26期。50歳となった今もA級で戦い続けるトップ棋士である。
AI全盛の将棋界。近年、戦法や戦型の流行のペースが速いのも、AIの普及と決して無縁ではない。棋士は勝負師、研究者、芸術家の3つの顔を持つと言われるが、佐藤氏の強いこだわりに棋士の一分と言ってもいい誇りを感じる。
ちなみに佐藤氏が色紙にしばしば揮毫する言葉は「天衣無縫」。その意味は辞書によると、天人の衣服には人工の縫い目などがない意から、詩歌などに技巧をこらしたあとがなく、いかにも自然で完美であるさまの形容、とある。
設立されれば札幌は5番目となる
ところで佐藤氏には現在、もう1つの顔がある。日本将棋連盟の会長だ。その将棋連盟が北の大地・北海道で、かねてからの悲願を叶えようと動いている。
東京以北で初となる研修会の設立である。奨励会がプロ棋士の登竜門として存在する一方、研修会は機能が若干異なる。
同じように実力でクラス分けされるのは奨励会と同じ。一定ランク以上になると奨励会への編入や女流棋士デビューへの道が開かれるが、必ずしも奨励会の下部組織ではない。
「将棋を通じた、お子さんの精神修養や健全育成の貢献を目指しています」(佐藤氏)
研修会は将棋のすそ野拡大も狙いとなっている。東京、大阪以外では名古屋、福岡にすでにあり、設立されれば札幌は5番目となる。
「研修会の設立を機に、さらに将棋への関心が広がればありがたいですね。今年10月のスタートを予定しているところです」(佐藤氏)
1月15日発売の「財界さっぽろ」2月号では、「札幌に研修会、北海道の将棋界を盛り上げる」と題し、来札した佐藤氏のインタビューを掲載。昨今の将棋ブームの背景、プロ棋士YouTubeチャンネル、SNSなどについても話を聞いた。
「財界さっぽろ」2月号は、北海道内の書店、コンビニとAmazonで好評発売中。財界さっぽろホームページ(https://www.zaikaisapporo.co.jp/bookshelf/digital/)から、パソコンやスマホで読めるデジタル版も購入できる。