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特定抗争指定で九州の抗争は鎮圧

 特定抗争指定暴力団に指定されたケースは2012年12月、ともに福岡県を拠点とする指定暴力団「道仁会」と「九州誠道会」(現・浪川会)の例がある。路線対立から一部グループが2006年に道仁会を離脱して九州誠道会を結成し、その後は対立抗争事件が続発した。

 一連の抗争で47件の事件が発生し、一般市民を含め14人が死亡した。山口組から2015年8月に一部の幹部が離脱して神戸山口組を結成し抗争が始まったのと構図が重なる。山口組と神戸山口組の間では、これまでに約120件の事件が発生し双方で9人が死亡している。

 約6年間にわたって繰り返された道仁会と九州誠道会の間の対立抗争事件だったが、双方が特定抗争指定されると、事件はピタリと発生しなくなった。山口組や住吉会などに所属する多くの指定暴力団幹部は、口調を合わせるようにヤクザとしての心情を次のように説明する。

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「(対立組織との)ケンカで懲役に行くのは当然のこと。これはヤクザである以上は、常に覚悟はしておかねばならない。しかし、バカバカしいことで逮捕されるのはまさにバカバカしい」

山口組弘道会本部で「特定抗争指定暴力団」に指定されたことを示す標章を貼る捜査員(1月7日) ©時事通信社

 道仁会と九州誠道会の特定抗争指定の効果は大きく、抗争事件の発生はなかっただけでなく事務所の使用が禁止されたため幹部が集まる定例の会合が開けなくなり、道仁会と九州誠道会の双方の統制が取れなくなり離脱者が相次ぎ弱体化。特定抗争指定は2014年6月に解除された経緯がある。

 当時、警察庁で組織犯罪対策を担当していた幹部は、次のように指摘する。

「携帯電話やメールなど通信機器が発達したとはいえ、お互いに顔を突き合わせて定期的に会合を持たないと物理的なだけでなく気持ちの上でも距離感が生まれてしまうようだ。親分が子分に携帯で電話して伝達事項を話しても、疑心暗鬼となり、信頼関係が薄れて次第に統制が効かなくなり勢力が弱くなっていったのは事実」

 その上で、道仁会と九州誠道会の弱体化の過程について、次のように付け加えた。

「これは警察も同じ。各県警の本部長は定期的に県内の署長を集めた署長会議を開き直接訓示する。警察庁が全国の本部長を東京に集めた全国本部長会議で長官が訓示するのも同じ。ヤクザも警察も似たようなところはあるのは間違いないところ。だから(道仁会と九州誠道会が)集まることが出来ずに弱体化して行ったのはよく分かる」