特定抗争指定で何が変わる?
「特定抗争」指定された暴力団に対しては、暴力団対策法に基づいた強力な規制が効力を発揮する。公安委員会が定めた神戸市や名古屋市、大阪市、京都市など、6府県の10市の「警戒区域」内で、組員が5人以上で集合▽組事務所への立ち入り▽対立する組の事務所周辺をうろつく行為などが禁止され、違反すれば警察当局は即逮捕出来ることになっている。
名古屋市には山口組の中核組織「弘道会」の本部事務所があるほか、神戸市には神戸山口組の中核組織「山健組」が本部事務所を構える。山口組の本家も同市内にある。大阪市内には双方の多くの組織が事務所を置いている。だが、特定抗争指定以降は、警戒区域内の10市にある約130の事務所が使用禁止状態となっている。
昨年、大きな衝撃を持って受け止められたのが、11月に尼崎市で発生した、元山口組系幹部、朝比奈久徳が米軍用自動小銃「M16」を乱射し、神戸山口組幹部の古川恵一を射殺した事件だった。現場は買い物客などの通行が多い商店街ということも話題となった。
警察庁幹部によると、朝比奈は2018年12月に、所属していた山口組傘下の竹中組を破門されていたという。しかし、警察庁幹部は「破門は偽装かもしれない。しかし、破門となっていようが、特定抗争の指定は団体間の抗争なので関係ない。被害者は神戸山口組の幹部。やった方が全くの無関係ならまた別の問題となるが、この事件では山口組との関係性はかなり濃厚。多くの抗争事件を除いて、この事件だけ取り上げても指定に問題はない」と強い口調で解説する。
古川射殺事件だけでなく、高山が刑務所を出所する前の2019年10月10日には、神戸市の山健組本部前で、同組系組員2人が射殺された事件が発生。さらに出所後の同年11月18日には熊本市内で神戸山口組幹部が刃物で刺されたほか、翌19日には札幌市内で、別の同組幹部宅に車両が突入する事件も起きた。
警察庁幹部はいずれの事件も、「高山の出所という影響で、山口組傘下組織が動き出した」と指摘している。