雑草生態学を専門とする大学教授であり、植物や昆虫に関するユニークな観点からのエッセイも人気の著者。昨年刊の本書では、30種以上の多様な生物たちの「死にざま」を印象的に描き出す。たとえば、繁殖行動を終えるや力を失い、地面に仰向けになって空を見ることもできず死を迎えるセミ。天寿をまっとうすることはなく、老いや衰弱と共にいつかは必ずライオンに狩られる運命のシマウマ。まるで仲間の死を悼むかのように振る舞う象……。
「人は命の終盤をどう生きるのかとぼんやり考えていたとき、ふと、『動物の場合はどうなのだろう?』と疑問が浮かんで。その思いを著者にぶつけたところ、タイトルになった『生き物の死にざま』というフレーズが飛び出し、惹き付けられました。苛酷な自然界での生き物たちの最期を知ることは、人生を見つめ直したり命の尊さを感じる機会にもなるのではないかと」(担当編集者の貞島一秀さん)
1項目6ページ程度と短く、文章も平易だが、内容はずしりと胸に迫る。10代前半から年配の方まで幅広い読者がおり、そのおよそ6割は女性だという。
「数カ月も絶食して卵を守り続け、孵化(ふか)を見届け死んでゆくタコの母や、空腹の我が子のために身を捧げるハサミムシの母。そうした親子の物語が、女性読者の琴線に触れているのかもしれません」(貞島さん)
2019年7月発売。初版5000部。現在5刷6万部