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奨学金の「ブラック」な実態。前途ある若者を食い物にしてよいのか

一族共倒れの危機を招く「ブラック奨学金」の破壊力

2017/06/20

「ブラック奨学金」は、いまや日本の喫緊の課題

『ブラック奨学金』では、本来は将来性ある若者を育てるための奨学金が「借金地獄」になってしまっている実態を、膨大な相談事例から明らかにした。実際の裁判の様子も調査し、具体的にどのように「取り立て」が行われているのか、生々しい事例も豊富に紹介している。

 また、海外の奨学金制度についても詳しく紹介した。それらと比較することで、日本の奨学金制度がいかに「異様」であるのかを理解できるだろう。端的に言って、日本の奨学金制度は学生を「食い物」にする仕組みになっており、民間の金融機関の“優良投資先”になっているのである。日本の将来を担う学生を「食い物」にする奨学金制度は、国家の政策として支離滅裂であるといわざるを得ない。

 

 一方で、政府は新しい制度として、返済の義務が免除された「給付型奨学金」制度の創設を予定している。また、企業や自治体による民間奨学金の制度も増えてきた。現在の高校生やその親御さんにとっては、こうした制度に期待するところもあるだろう。もちろん、これらの新しい制度を賢く使うことは重要である。

 だが、本書では、これらの制度にも大きな危険が潜んでいることを警告した。例えば、政府の「給付型奨学金」は、成績が落ちると返済を迫られることになっている。しかも、返済できない場合には、やはり訴訟で回収するというのである。また、民間の助成金についても取材活動を行ったが、会社を辞めた際に返還請求されるなど、リスクが高い実情が見えてきた。

 

悩める学生や親も必読!

 さらに、すでに返済が難しくなってしまった場合、借りた本人が自己破産してしまい親族に請求が来た場合に、どのように対処すればよいのかも本書に詳しく載せておいた。

 奨学金返済訴訟は決して他人事ではない。自分自身が保証人になっていなくとも、親、配偶者など、親族の誰かが背負っていることもある。また、保証人の奨学金債務は相続によって自分自身に降りかかることもある。奨学金返済問題は、非常に多くの人に関わるのだ。

 最後に、本書では学費や奨学金制度の実情や国際比較を通じ、あるべき制度についても提案している。

 高校生本人、子供を持つ親、孫や甥・姪に学生がいる方々に、ぜひ本書を手に取ってもらいたい。奨学金の危険性と対処法を知り、リスクを最小限に抑えてもらいたいのだ。そして、多くの方に日本の学費政策の問題を知ってもらうことで、一日も早い制度改革に結び付くことを願っている。

こんの はるき
1983年、宮城県生まれ。NPO法人POSSE代表。一橋大学大学院社会学研究科博士課程在籍(社会政策、労働社会学)。著書『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』(文春新書)で大佛次郎論壇賞受賞。2006年、中央大学法学部在籍中に、都内の大学生・若手社会人を中心にNPO法人POSSEを設立。年間2000件の労働相談に関わっている。ブラック企業対策プロジェクト共同代表もつとめる。著書に『ブラックバイト 学生が危ない』(岩波新書)、『ブラック企業2 「虐待型管理」の真相』(文春新書)ほか多数。

ブラック奨学金 (文春新書)

今野 晴貴(著)

文藝春秋
2017年6月20日 発売

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