女優の新垣結衣のイメージを問われたとき、まずショートカットを思い浮かべる向きも多いだろう。もっとも、新垣が髪を短くしたのはわりと最近で、2011年にマンガ『らんま1/2』の実写ドラマ版で天道あかねに扮するにあたり、そのキャラにあわせて髪型を変えたのが始まりだ。
中学1年生だった2001年、女子小中学生向け雑誌『ニコラ』のモデルとしてデビューした新垣は、きょう6月11日が誕生日。「ガッキー」の愛称で親しまれる彼女も29歳になった。昨年はドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』で、星野源演じる恋愛経験のない三十男と「仕事として結婚」した臨床心理士・森山みくりを好演し、話題を呼ぶ。『逃げ恥』については、新たな結婚や仕事の形を提示したとの評も聞かれた。もっとも、新垣はすでに2011年放送の『全開ガール』で、家事や子育てに専念するパートナーに代わり、外でバリバリ稼ぐ弁護士を演じていた。このほか、『コード・ブルー―ドクターヘリ緊急救命―』(10年)では医師、『リーガル・ハイ』(12年)ではやはり弁護士と、ここ数年は専門的な職業に就いた女性の役が目立つ。
仕事に熱を入れるあまり空回りする女性を演じることも多く、『リーガル・ハイ』では、上司である堺雅人演じる弁護士・古美門研介から、新垣演じる黛真知子が「朝ドラのヒロインのようだ」と揶揄される場面もあった。もっとも、脚本を書いた古沢良太によれば、黛は「実際の『朝ドラのヒロイン』よりずっとヘンな人」であり、「あのキャラクターは“新垣結衣さんをいかにはっちゃけさせるか”という一念でつくっ」たのだという(木俣冬『みんなの朝ドラ』講談社現代新書)。
歴代の朝ドラのヒロインといえば、男性優位の社会に果敢に進出するイメージが強い。新垣のこれまでの役柄とも合致するはずだが、彼女が朝ドラに出演したことはない。これはひょっとすると、新垣の演じる役が、従来の女性像を揺るがすという意味で、朝ドラよりも先を行っているからではないか。その傾向は、ショートカットにしてからますます加速しているように思われる。今後もガッキーがいかにはっちゃけるのか、目が離せない。