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今週の加計学園まとめ 飛び交う「ご意向」「忖度」「印象操作」を整理する

首相は1時間に5回も「印象操作」と発言した

2017/06/10
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なぜそれでも、高い支持率なのか?

 安倍首相の強気の源泉は、高い支持率にある。

 しかし、JNNが6月3日と4日に行った世論調査で、安倍内閣の支持率は前回の調査より8.9ポイントと大幅に下がって54.4%、不支持率は9.3ポイント増えて44.1%となった。加計学園問題について政府側の説明に「納得できる」と答えた人は16%にとどまり、「納得できない」と答えた人は72%に上る。「総理のご意向」などと書かれた文書に関しても「前川前事務次官の説明」を信じると回答した人が58%に達した。

「まだ支持率が50%以上あるのか」と思う向きもあるかもしれないが、日本経済新聞が5月27日に行った「読者アンケート(クイックVote)」では、安倍内閣支持が26.7%、不支持が73.3%、『週刊文春』がメルマガ読者1500人に対して行ったアンケートでは、安倍内閣支持は22%、不支持は78%と、いずれも直球な数字が出ている。

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 安倍首相は加計学園に関する野党の調査要求はすべて拒否し、国会会期終了で幕引きする腹づもりだという。しかし、疑惑そのものだけでなく、質問にまともに答えようとしない姿勢が見透かされ、支持率の低下を招いているのは明らかだ。「一強の驕り」が綻びを生じさせている。

前川喜平 前文部科学事務次官
「教育とは人々が幸福を追求するために必要不可欠なものです。
その教育行政を司る文科省で『隠蔽』など二度とあってはならないことです」

『文藝春秋』7月号

前川喜平前次官 ©時事通信社

「官邸の最高レベルが言っている」「総理のご意向だと聞いている」と記された文書が本物だと告発した前川喜平前事務次官に対して、政府からの攻撃が強まっている。

 菅義偉官房長官は5日の衆院決算行政監視委員会で、前川氏について文科省の組織的な天下り斡旋問題に対して「問題を隠蔽していた責任者」と指摘。昨年末に杉田和博官房副長官と面会した際は「自らの進退については示さなかった」とし、前川氏が「定年である(今年)3月末まで次官を続けたいと言ってきた」と説明した(産経新聞 6月6日)。

 これらの菅官房長官の発言に対して、前川氏は「説明が不十分と思われる点、事実と異なる点がある」として報道各社に文書で反論を行った。文書の中で「私が隠蔽を指示するなど直接関与したことはない」「次官を続けたいと申したことはありません」と記している。

 前川氏は、6月9日に発売された『文藝春秋』7月号に長文の手記を寄せている。これまでの経緯、木曽功内閣官房参与や和泉洋人総理補佐官らとの会話、出会い系バーに出入りした理由、天下り問題発覚の経緯、自主夜間中学でのボランティアなどについて、詳細かつ簡潔に語られている。加計学園問題を理解するために、一度は読んでおいたほうがいいテキストだ。

続々と出てくる文科省からの「証言」、そして再調査へ

 この中で前川氏が語っていることは、菅官房長官への反論と矛盾していない。天下り問題に関しては、事態に気づかなかったとして反省の弁を述べている。文書に関する告発は、文科省が「新たな隠蔽」を行わないようにするためのものだ。

 天下り問題発覚後の今年1月5日に松野博一文科大臣に引責辞任を申し出て、杉田副長官にも辞任の意を報告、即了承されたという。菅官房長官にも報告に行き、その場で了承されたという。菅官房長官は『文藝春秋』を読んで、もう一度反論したほうがいい。

答弁する菅官房長官 ©共同通信社

 文部科学省からは新たな証言も続々と出てきている。NHKの調べによると「官邸の最高レベルが言っていること」などと記された文書は、文部科学省内の複数の課の少なくとも10人以上の職員にメールで複数回送信され、今も個人のパソコンの中などに保管されていることがわかった(NHK NEWS WEB 6月3日)。

 野党側が5日の衆院決算行政監視委員会で10名の名前を読み上げると、常盤豊文科省高等教育局長は「同姓同名の職員は実際いる」と認めたが、松野博一文科相は「メールを含む文書は、出所、入手経緯が明らかでない」と調査を拒否していた(中日新聞 6月6日)。しかし、文科省内には前川氏の告発を支持する声も多いようだ。とある文科省の現役幹部は『週刊文春』の取材に対して、「前川さんが実名告発したことは、多くの職員が『よく言ってくれた』と受け止めています」と語っている。前川氏にも文科省の先輩や同期、現役の後輩たちから励ましのメールが届いているという(『週刊文春』6月15日号)。

 こうした流れを受けてか、6月9日には松野文科相が追加の省内調査を行うことを表明した。松野氏は「追加調査が必要だという国民の声が寄せられ、総合的に判断した」と述べている(朝日新聞DIGITAL 6月9日)。