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マクロン圧勝でも消えない、極右勢力の「核」

フランス小村の第一回投票を訪ねて

2017/06/18

そして和やかに投票は始まった

投票所

「投票所は朝一番、8時に開くからクロワッサンとカフェがあるよ」と、前々日に撮影許可を取りにいった村役場で、アラン・ラミー村長はニコニコしていた。ところが土曜が親族の結婚式だったそうで、朝4時に眠ったという彼は、「ごめん、準備できなかった」と一転、平謝り。選挙管理委員として来ていた3人の村会議員は苦笑いしながら、テンションが上がらないと村長を責め立て、「せめてコーヒーを!」と突き上げる。投票日の長い日曜は、かくしてゆるく始まった。

 

 8時と同時にやってきた最初の投票者は、年配の男性だった。今回の下院選挙でブレジー・バの有権者リストは493人を数え、うち3人は在外公館での投票済み。この日、村役場へ投票に来る可能性のある有権者は490人という訳だ。

 朝方はやはり年配の来場者が多い。「選挙カード」で身元確認が行われた後、各党・各候補者が用意した投票用紙を数葉つかんで、投票者は「イゾロワール」と呼ばれるカーテンの向こうに隠れ、そこで思うところの一枚を封筒に入れる。そして透明な投票箱へ進んで一票を投じると、カーンとゴングのような音が鳴り響く。

候補者の名前が書かれた投票用紙

 それにしても面白いのは、選管側の村議と住民のほとんどが知り合いで、握手やビズ(頬にする軽いキス)を交わさずに帰る人がほぼいないことだ。裏を返せばそれだけ人間関係が濃密な村の内部で、誰がどの党に入れたかは、とてもデリケートな話だ。

 中には、外国人である筆者が投票所で写真を撮っていることについて、明らかに違和感を抱く投票者も。写真の許可を求めると「フランスの新聞じゃないのか?」とこわばった表情で拒絶する人もいた。村議の中にも「日本のメディアがどういった訳で?」と尋ねてきた人がいたので、「マクロンが多数派を獲れるか否かは世界的に注目されている」と答えると、「あなたもマクロン支持者なのか?」と突っかかってくる。別に、彼が多数派を獲ることを期待しているとは、ついぞいっていないのだが。こうした地域社会で個人の政治信条の話は、匿名性の高い都会よりもずっと微妙な話題のようだ。

投票用紙を入れる封筒

 投票者全員を写真に収めても仕方ないので、夕方に出直すことにした。投票終了となる18時まで30分を残して17時半に来てみると、朝方とは逆に30代とおぼしき若い家族連れの姿が多い。車の中で一人が子供をあやす間に、もう一人が投票を済ませる、そんな動きだ。

奥にある投票ブースが「イゾロワール」

 そうこうしていると、ラミー村長が朝よりも明らかにしゃっきりした様子で現れた。2時間ごとに交替で必ず3名で投票受付を遂行する、その決まり通りに選管業務を維持してきた村議たちが、痺れを切らしたのか、あと何分? もう閉めていいのか? と時計を気にしだす。まだ2分前ある、と村長。最後の投票者は短パンのお兄さんで、全仏オープンでナダルの優勝インタビューを観ていたらギリギリになったとか。ちなみに18時02分に、もう終わっちゃったかしら? と現れた女性に対しては、「残念でしたね、駄目です、マダム。また来週の第二回投票で!」そうきっぱり断って、村長は投票所を閉めた。

投票所の外に掲示されていた候補者のポスター

 最初の話題は、投票者は何人来たか? というものだ。有権者490人に対して投票者は267人。「悪くないね」という声があちこちで上がる。後に分かったことだが、今回の下院選挙は全国的には過去最高となる棄権率51.29%を記録したほどで、暫定の数字で半数超えは好感触なのだ。

 とはいえフランスは二回投票制。

「大統領選から数えて2か月ちょっとの間に4回も日曜を費やすわけだからね。旅行や結婚式の季節柄だし、なかなか投票率が上向くのは難しいと思う」と、村議の一人がいっていた。