楽天市場が「送料無料」を押し付けたから?
この“超”がつくほど業績が絶好調だという事情もあって、ワークマンは楽天からの撤退を決めたと思われる。ワークマンのプレスリリースによると、ネット通販における楽天の売上の比率は2割程度。作業服だけの品揃えであれば、ワークマン以外のメーカーの選択肢も出てくるが、一般顧客向けの品揃えが充実し「ワークマンの商品が欲しい」という指名買いが増えているので、この2割の売上は自社サイトで取り返せるという読みがあったに違いない。
一方、一部のメディア等では「ワークマンが撤退したのは楽天市場が送料無料を押し付けたからだ」という論調が出ている。個人的には、これが「きっかけ」にはなったと思うが、大きな理由ではないように思われる。
楽天は3月18日より3980円以上を購入した場合(沖縄や離島などを除く)、サイトの表示を一律で「送料無料」に変更する方針を打ち出し、送料を出店者負担とする。これに対し、一部の出店者からは「一方的な負担の押しつけ」だと反発も起きている。
勝算は「ネット通販の67%を占める“店舗受取”」
しかし、ワークマンのプレスリリースによると、現在、ネット通販の67%は店舗受取となっており、実のところ送料負担の影響を大きく受けるわけではない。先述したようにワークマンのネット通販において、楽天の売上は2割しか占めていない。楽天が3980円以上を送料無料にしたところで、現状自社ECサイトでは1万円以上を送料無料として打ち出しているワークマンにとって、そこまで大きく利益を削ることにはならないはずである。
また、楽天も楽天物流を展開して、送料を抑える施策を打ち出している。発送業務をアウトソーシングすれば、送料が安い軽量なアパレル用品を取り扱うワークマンは、楽天を撤退しなくても十分利益を確保できるはずだ。
そのような事情を考えると、ワークマンには楽天を撤退して送料無料化を回避することよりも、もっと大きな“勝算”があるのではないかと思われる。それが先述したワークマンのネット通販の67%を占める「店舗受取」である。
ユニクロでも「店舗受取」が44%
実は、ネットで注文をして、実店舗で受け取るC&C(クリック・アンド・コレクト)という消費の動きは、ネット通販業界において大きなトレンドになっている。アメリカの大手小売業のウォルマートはこの戦略で、年率40%でネット通販事業の売上を伸ばしており、株価では2019年前半の6ヶ月でAmazonが約6%の上昇にとどまったのに対して、ウォルマートは約15%上昇という好調ぶりを見せているのである。