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SARS当時より「情報が減っている」

 中国は2002年から2003年にかけて、約8000人が感染し、世界で774人の死者を出したSARS(重症急性呼吸器症候群)の猛威を経験している。しかし、その反省は活かされていないと、矢板氏は指摘する。

「当局によるメディア統制も混乱に拍車を掛けました。この点でも、中国はSARSの教訓を全く活かせていません。当局は1月20日の情報開示から武漢閉鎖まで、雪崩のように一気に施策を行ったことで、国民の間には恐怖と不安が蔓延した」

香港でも危機感が広がってる ©AFLO

 SARSが流行した17年前に比べると、インターネットやスマートフォンの普及で、中国国民の受け取る情報量も増えていそうなものだが、そう簡単ではないという。前出の安田氏が語る。

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「一見すると今回の新型肺炎も情報量は多く見えます。でも、実はSARSの時に比べて、中国国内で自由に流れる情報が圧倒的に少なくなっていると感じています。なぜなら当時は、“習近平体制以前”だったので、中国メディアなりに言論の自由が存在していた。それが、現在はスマートフォンが普及し、各メディアの情報に触れやすくなっているにもかかわらず、情報統制のため、どんなニュースも大元を辿ると出所は人民日報、新華社、CCTVなど中央メディアなんです。政府の情報に不信感を持つ国民がデマを信じてしまうのも無理はないのです」

 さらに、安田氏は警鐘を鳴らす。

「もはや日本や台湾など、情報が隠蔽されない地域での感染状況を元にしたデータを信用するしかないのかもしれません」

 1月27日、武漢市長がCCTVのインタビューに応じ、「情報公開が速やかでなかった」と認めた。感染が拡大する様相を見せる新型肺炎。1日も早く収束へ向かってもらいたい。

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