「大気汚染が酷い北京ですが、このところ空気がきれいな日が続いていて、街を歩く人は誰もマスクなんてしていなかったんです。それが、習近平国家主席が新型肺炎の情報開示を指示した1月20日の夜を境に、マスクはどこも売り切れの状態。感染症に最も効果があるといわれる米3M社製の『N95』規格のマスクなどはネットでは10倍の価格で取り引きされている。

 市民も外出は控えていて、東京でいうと銀座にあたる繁華街・王府井も閑古鳥が鳴く状態。駅では、全身防護スーツ姿の係員が乗客1人1人のおでこに体温計を当てていました。もはや春節を祝うムードなど皆無です」(全国紙の北京特派員)

武漢市内の病院での新型肺炎の治療の様子(1月18日) ©AFLO

 中国・武漢で昨年12月に発見された新型コロナウイルスが猛威を振るっている。日に日に感染者数は増え続け、1月29日現在で感染者は5900人を超え、死者も130人を超えた。

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「地方都市でも『武漢の次には自分の街が封鎖されるのでは』という不安が渦巻いている」(同前)という状態の中国国内で、いま問題になっているのが、国民の間でSNSを通じて広がるデマ情報だ。

強い酒でウイルスは殺せる?

 長年中国について取材するルポライター、安田峰俊氏が解説する。

「ウェイボーやWeChatなど中国人が情報収集するSNS上には、『板藍根』という漢方薬を飲めば治るとか、ウイルスはアルコールに弱いから『強い酒を飲めばいい』などといった誤った情報が拡散されています。さらには『この騒動自体がアメリカの陰謀』などという説もまことしやかに囁かれている。問題は、みな悪意はなく、何が事実かわからずに心配で拡散してしまっていること。デマを信じた人が『〇〇をすれば大丈夫』と思い込み、マスクを着けずに外出してしまう例も報告されており、大変危険です」

国営通信社の中国新聞社も、公式ツイッターでデマに注意するよう呼びかけている。「板藍根」についての記述も
日本についてのデマも。「武漢から入国した感染疑いのある観光客が病院から逃げた」という内容のデマ投稿