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 今回、発生源の武漢市では当初の感染者がいずれも海鮮市場に出入りしていたことから、野生動物からウイルスが感染した可能性が指摘されている。医療関係者の間では「またか」の思いが禁じ得ないのが正直なところだろう。SARSにおいても発生源は同じ長江以南で、同じ野生動物からの感染だったからだ。

ハクビシン ©時事通信社

ウイルスの接触の場となっている食用野生動物のマーケット

 そもそも中国南部から東南アジアの山岳地帯にかけては、食用野生動物のマーケットが根強い人気を集めている。ハクビシン、ネズミなどの哺乳類からさまざまな昆虫、あるいは密猟されたゾウやカワウソなどの肉まで市場では密売される。「決して海の幸山の幸に恵まれていない地域ではないのに、その多彩さは圧巻」と市場を知る中国在住者も舌を巻く。

 ウイルスは宿主に寄生することで増殖し、増殖の過程で様々な「進化」を遂げることもある。家畜と違ってさまざまな生物に接触する可能性が高い野生動物はそれだけウイルスの宿主である生物に接触する可能性が高く、当然、それを食すれば未知のウイルスに感染する可能性も高まる。この地域はいわば、未確認ウイルスと人間の格好の接触の場となっているわけだ。

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 ただ、不気味なのは、英医学誌ランセットに24日に発表された中国人研究者の論文が、初期の患者の中には海鮮市場と接点のないものが14人も確認されていたことを指摘していることだ。米在住の進化生物学者のなかには10月に発生していた可能性を指摘する者もいる。

武漢大学中南病院のICUで働く医療スタッフ ©時事通信社

 今回の新型コロナウイルス、感染者数が過少報告されている理由からも分かるとおり、SARSほどの「殺人性」はいまのところ発揮していないからこそ拡大が続くという側面もある。

 ただ、今後の最大の問題は、前述の通り、宿主から新たな宿主に移るにつれ、ウイルスは進化を遂げることがあることだ。実際、新型コロナウイルスも当初は人から人への感染力が疑われていたが、あっという間に人から人への感染で拡大した。

 感染拡大を食い止めるのが先か、それとも拡大を止める前にウイルスがさらに凶暴なウイルスに進化を遂げてしまうのか。しかも、潜伏期間中にも感染力が確認されていることから、発熱などによる空港でのスクリーニングでは防ぎきれない。受け入れ側として日本も最前線のひとつに立つウイルスとの闘いは、まだ予断を許さない。