いま、日韓関係は「戦後最悪」といわれている。既存の慰安婦問題や領土問題に加えて、徴用工判決や韓国への輸出管理など新たな懸案が次々と発生している。
一方で、2017年5月に就任した文在寅大統領が歴代のどの政権よりも強硬な反日外交を繰り広げていることが、政権の支持率アップに貢献しているのも事実である。
文大統領が極端な反日外交を展開する背景にあるのは、深刻化する格差社会である。韓国ではいま、社会が一握りの勝者と大多数の敗者に分断されており、国民の間に不満が高まっているのだ。
昨年11月に『韓国 行き過ぎた資本主義』(講談社現代新書)を上梓したフリージャーナリストの金敬哲氏は、いまの韓国は「無限競争」の苦しみに陥っていると指摘する。とくにそれが顕在化しているのが若者への教育だという。金氏が「無限競争」を強いられる小学生の実態を綴った。
徹底した管理教育
韓国社会の教育熱を象徴するのが、「大峙洞(テジドン)キッズ」だ。ソウルの富裕層が住む漢江の南岸、江南地域の中にあって、学習塾がひしめく地区「大峙洞」に通う子供たちのことである。
大峙洞の名門塾では、徹底した管理教育が行われ、早ければ幼稚園の時から、目標とする進路に向けた体系的なカリキュラムが施される。もちろん、多額の費用がかかるが、ソウルの他地域や地方からも名門塾を求めて、幼い子供を連れて大峙洞へ転居する。
大峙洞に住む主婦のパク・ミンジュ(仮名)さんは、1年前の冬、ソウル市麻浦区から引っ越してきた。ミンジュさんの息子、ヒョンジュン君は大峙洞C小学校の5年生だ。C小学校の前の道路は、下校時間が近づくと車で埋め尽くされる。下校する子供を拾って塾に連れて行くため、母親たちの車が待機しているのだ。
ミンジュさんが言う。
「学習塾街までは歩いて15分くらいですが、ほとんどの子供は母親が車で送っています。1日に少なくても2、3軒の塾を回るので、子供だけだと時間管理が難しいからです」