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「胸を触ってみろよ」クラスメイトの“挑発”に応じた男子高校生が、「セクハラ」を理由に部活禁止処分

果たして学校側の指導は適切だったのか

2020/01/30
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ある先生から「空気のような存在になれ」と言われた

 6月14日午後、学校側から父親の携帯電話に連絡があった。「断続的なセクハラがあり、特別指導があります。明日学校へ来てください。(出場予定だった)全国大会には出られません」との内容だった。

 セクハラに関しては双方の主張が合致していない。しかし、きちんとした事実確認が行われないまま、結果、6月15日から28日まで、特別指導として別室登校となる。校長は、早急に処分に至った理由を「試験があるから」と両親に説明した。このときの前提事実は「セクハラ」だ。

 6月16日、敏志さんは「反省日誌」を書く。このときに「なぜ触ったのか。それは、あおられたことだ。『触ってみろよ』と言われたから。今となっては自分でも当時の自分をアホらしく思う」などとある。

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 6月27日には謹慎期間のまとめとなる「反省文」も書いた。そのなかには「その友人が『胸を触ってみろよ』と言った」と書いた。しかし、学校側の指導で書き直され、削除されている。

「B教諭から口頭で、こう書くように、と(書き直しを)指示されました。(反省文なのに)俺の言葉で書かせてくれないんだな、と思いました」

 反省文には当初、「ある先生から、『空気のような存在になれ』と言われたので、そうしようと思います」とも書かれていた。これも削除された。都側は、発言を認めたが、人格否定の意図はないと主張する。

特別指導の理由が「過度な身体的接触」と変更

 6月27日、両親はB教諭と面談した。このとき、書き直し前の「反省文」を見せられた。B教諭からは、「反省文に書いてあるように、胸を触ってみろと言われたのは本当なのだと思う」などと言われたという。また、第三者の女子生徒からの証言で、明子さんから誘った部分もあると聞かされた。

東京地方裁判所。1月31日に判決が言い渡される ©文藝春秋

 明子さんは「触ってみろよ、なんて言ってない」と主張していたが、6月29日には、敏志さんと明子さんとのLINEで、性的な表現で挑発していたことを示すやりとりを両親が発見した。

 そのため、7月11日、両親は証拠を提出し再調査を願い出た。最終的に特別指導の理由が「過度な身体的接触」と変更され、12月まで部活動参加の全面禁止は続いた。そして「謝罪の会」が開かれた2018年1月になってようやく平日に限り、時間制限付き、練習復帰になる。しかし、大会や地元の行事には参加できなかった。

 敏志さんは当時、部活復帰を最優先して交渉した。当時の弁護士の立ち合いで「約束事」を守るという「誓約書」を交わした。敏志さんに制限を強いる不利な内容だが、「学校に行くのは当時、部活のためだった。面倒なことが増えましたが、部活は自分の生きる理由なので、我慢できました」と話す。ただ、特別指導前後の理不尽な対応と部活制限によって、精神的に影響が出る。