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「胸を触ってみろよ」クラスメイトの“挑発”に応じた男子高校生が、「セクハラ」を理由に部活禁止処分

果たして学校側の指導は適切だったのか

2020/01/30
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 2016年11月、都立高校に通っていた男子生徒・敏志さん(仮名、当時1年生)は、同級生の女子生徒・明子さん(仮名)との会話中に「胸を触ってみろよ」と言われ、応じたことがあった。放課後で、部活動の休み時間での出来事だった。

  触った後の明子さんの様子は無反応だった。笑っても、怒ってもいない。ただ、部活後のLINEでは「マジ殺す」「胸触ったでしょ」と言われたので、敏志さんは「触ってと言ったから」と返事をした。明子さんは「それは冗談な」と返す。その後もLINEのトークは続いたが、この話題は終わり、学校生活について盛り上がった。

取材に応じる敏志さん(仮名) ©渋井哲也

LINEでは一般的な恋愛トークや下ネタも

 ところが、半年以上が経った翌年6月、明子さんは「敏志さんからセクハラを受けた」として学校側に訴えた。敏志さんにとっては唐突だったが、胸を触ったことは認め、経緯を説明した。一方、学校側は別室指導を実施し、部活への参加を制限した。敏志さんは、当時の指導は不適切だとして、東京都を相手に損害賠償を求め、東京地裁に提訴した。都側は棄却を求めている。

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 1月31日の判決を前に、敏志さんが取材に応じた。「裁判は、名誉を回復するためのもの」と話している。

 訴状などによると、高校2年時の2017年6月、明子さんに対する断続的なセクハラを行ったことを理由に、敏志さんは約2週間の別室登校処分を受けた。この指導の前提となる調査が不十分だとしている。また、部活動への参加の禁止や制限も行われ、不利益な扱いを受け続けたと主張する。

 一方、都側は、準備書面によると、特別指導や部活動の制限に違法性はなく、校長ら教職員に注意義務違反はないと、原告の請求を棄却することを求めている。

 敏志さんによると、被害を訴えた明子さんとは音楽系の部活でも一緒であり、一般的な恋愛トークや下ネタも含めて、LINEでやりとりする仲でもあった。

©iStock.com

C教諭から「これは犯罪だからな」と言われ

 そもそも問題行動の把握について、都側は、明子さんが2017年6月13日、A教諭に身体接触を訴えたと主張する。敏志さんは翌14日にA教諭に言われるが、その前にB教諭に呼び出されることになる。「6月13日の部活中に、B教諭に呼び出されました。(身体接触について)認めた上で、『触ってみろよと言われた』と説明しました」と話す。

「明子さんがB教諭にLINEで被害を訴えたようですが、(そこに至る)経緯を(B教諭に)話してあったので、問題にならないと思っていました。

 翌14日に指導された際には、C教諭に『これは犯罪だからな』と言われ、携帯を取り上げられました。そして、封筒の中に入れられ、ホチキスで止められ、使用禁止になりました。私が合意だったと主張しても事情も聞かれず、そのやりとりがあるLINEの確認はされませんでした」