日本車を破壊し尖閣に上陸する「反日デモ」の猛威
それらを主導する著名活動家に本音を聞いた
中国では、戦時中の日本へ強制連行された中国人元労働者や遺族の提訴が相次ぎ、戦時中の賃借をめぐる訴訟の敗訴で商船三井の運搬船が裁判所に差し押さえられた。これら対日訴訟を支援しているのが、民間団体「中国民間対日賠償請求連合会」会長で投資家の童増氏(57)だ。童氏は一九九〇年代初め以降、中国政府が七二年の日中共同声明で放棄した戦争賠償請求に関して「民間・個人の請求権は放棄されていない」と主張し、賠償請求活動を展開。また「中国民間保釣連合会」会長として沖縄県・尖閣諸島の領有も訴え、尖閣諸島への上陸も後押しした。四月に著名「反日活動家」の本音を聞いた。
日本政府が友好を望まなくなった
――日本に対してどういう認識を持っているか。
「一九四五年以前の戦争時代の日本と、敗戦後の日本とを区別している。前者は日本民族全体に軍国主義が充満したが、後者は米国の改革によって世界の経済や平和に貢献しました。しかし日本政府は戦後、戦時中の日本軍国主義の中国侵略の事実を隠し、自身は『(加害者ではなく)被害者だ』と強調した。日本の民衆は『我々は原爆の被害者だ』として、侵略の事情をよく知らない。日本社会で中国侵略が隠され続けた背景には、中国外交の問題もあった。中国政府は七二年の国交正常化以降、賠償を放棄し、戦時中の日本軍の暴行を暴露してこなかった。『中日友好』のため日本を刺激したくなかったからです。これが日本政府による『歴史改竄』や『侵略戦争否定』を生み出しました」
「私がまず言いたいのは、日本人を恨みません。しかし日本政府のやり方には非常に大きな怒りや反感がある。われわれが日本への賠償を要求しているのは、戦後に残された問題を民間の努力によって明るみに出すためです。われわれは『反日』を強調しているのではなく、(問題を明るみに出して)二十年後、三十年後の長期的観点での『中日友好』を目指しています」
――九一年に全国人民代表大会(全人代=国会)に対日賠償を求める意見書を提出するなどして以降、あなたは公安当局に拘束されたりして圧力を受けましたが、一貫して日本を訴える活動を続けているのはなぜか。
「中国の戦争被害者は日本国内で提訴したが、敗訴した。多くの人が亡くなりました。九〇年代に(中国老齢科学研究センターに勤めていた)私に対して彼らが手紙を書いて送ってきた。当時、私の知識は非常に限られ、北京の図書館で戦争に関する一次資料を調べてようやく日本軍の暴行の実態を知った。九二年になると全国の被害者が私を探し出し、手紙を書いては残忍な行為があったことを知らせてくれた。私は中日両国の次世代の人たちが歴史を知り、歴史を繰り返してはいけないと感じたのですが、当時のわれわれの国の外交方針はできるだけそれを表に出さず、『友好』だった。こうした深い憎しみは覆い隠されたのです」
――これまで受理されなかった強制連行の提訴が三月に初めて受理されたが、習近平指導部になって方針が転換したのか。
「中国外交当局はこれまで日本企業を提訴すると中日友好関係に影響すると恐れてきた。しかし現在は変化した。変化の原因として挙げられるのは、強制連行の被害者があまりにも多いこと。さらに元労働者が高齢になり、今回の提訴が最後のチャンスで、当局も動かざるを得なくなった。日本政府が『友好』を望まなくなったこともある」
「一方、大量の人々が提訴すれば、国内の安定に影響するのではと、当局は懸念していたが、これは間違った観点です。デモ行進など過激な手段で訴えるのではない。いかに多くの人が提訴しようと、法律を武器に法的秩序に従っているわけですから。かつて私に対して当局の圧力はあったが、今はない。開放的になった」
「私の感じるところでは安倍晋三首相は歴史を尊重していない。このやり方では中日関係はさらに決裂の方向に向かい、全世界で日本民族全体にマイナスの印象をもたらすでしょう。習近平国家主席は三月末にドイツで行った演説で『南京大虐殺』に言及したが、これは歴代指導者では初めてのことでしょう。日本がずっと歴史を改竄し、侵略戦争を認めようとしないから、戦争や虐殺に反対するため提示したのだと思う。中国として国際義務を果たし、国際法を守り、中国の声を代表したという点で長期的な中日関係にとって有益です。また欧州で話したのは欧州の多くの人がこれを知らないからでしょう。安倍首相が退き、新たな首相が誕生して歴史を直視しなければ、日本はまた、安倍首相の『古い道』を歩むことになるだけです」
――あなたが目指すところは具体的に何ですか。「中国民間対日賠償請求連合会」はどんな役割を果たしているのか。
「中日間の歴史問題が解決しないのは、日本に対する庶民の憎しみが解決しないからです。『中国民間対日賠償請求連合会』は象徴的な機構で、旗印にすぎない。全国で行われる個々の提訴は、主に各地の弁護士が行い、われわれが連絡役を務めたり、資金的な支援を行ったりしている。われわれの目的は中国国内で、さらに多くの被害者が法律を武器にして日本政府や日本企業を提訴することです」
――尖閣諸島(中国名・釣魚島)をめぐる問題では島への上陸を後押しし、反日デモも支持しました。尖閣問題に関して最近、どのように対応しているのか。
「中国政府が現在、この方面で役割を発揮するようになり、われわれ民間の役割は一段落しました。われわれは、中国政府が釣魚島を取り戻すためどう抗議活動を展開していくかに関心を持って見ている。そういう意味で後方に退いた」
――商船三井の船舶差し押さえに関してはどう考えるか。
「戦時中の日本の行為に対して法律的な決定が下され、問題が解決した。日本国民はこうした事情を知らなかっただろうが、差し押さえによって覆い隠された問題が明らかになり、長期的な両国関係にとって有益だと思う」