すべての元凶は「生産性の低下」にあり
日本の物価が安くなったのは、2013年から始まった「異次元緩和」で円安になったせいもあります。
しかし、この7年間で進んだ円安だけでは説明できないほど、日本の物価下落は急激に進行しています。
ではなぜ、日本は「安い国」になってしまったのか?
じつは日本の経済的地位の低下は、生産性の低下によって生じたものです。名目GDPを労働力人口(就業者+失業者)で割った「1人当たり生産性」が長い間、低い水準であったため、いまや主要先進国だけでなく、オーストラリア、アイルランド、イスラエルにも抜かれてしまったのです。
「でも、日本経済はすでに成熟化していて、成長の余地は限られている。1人当たり生産性が低くても仕方ないじゃないか」という反論をする人もいます。しかし、これは説得力がありません。
日本と同じように成熟化が進んだほかの先進国では、持続的な生産性上昇を遂げているからです。
生産性が低くなると賃金が減る理由
生産性の伸びが高く、その水準も高い国は、賃金水準もまた高いのです。たとえばスイスの場合、生産性は日本に比べて1・4倍もあります。賃金も、製造業の時間当たり労働コストでみると2・4倍もあります。
「生産性が低くても、生活レベルがそれほど変わらないのであればオッケーじゃん」という意見もあります。しかし、生産性の低下にともない、日本はじわじわと確実に貧しくなっているのです。
仮に生産性の伸びが低く、輸出競争力が劣位になると、どうなるでしょう。
生産性の伸びが低いということは、海外との品質改善競争で負けるということです。すると利益を確保しにくくなるから、コストダウンをして競争力を維持するしかありません。そうなると、労働者の賃金が削られます。そして、自国の稼ぎでどのくらい海外製品を購入できるかという交易条件が悪化します。
では、生産性を向上させるにはどうすればよいのでしょうか?
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そのヒントは、「文藝春秋」2月号及び「文藝春秋 電子版」掲載の熊野英生氏(第一生命経済研究所首席エコノミスト)のレポート「日本はもはや先進国ではない」、および熊野氏の著書『なぜ日本の会社は生産性が低いのか? 』(文春新書)に詳細に書かれています。
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生産性最下位 日本はもはや先進国ではない
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