「確かに今の日本はさまざまな問題を抱えています。どこから手をつけるべきなのか、その優先順位を聞かれたら、わたしはこう答えます。『順位をつけることはできません。すべて解決しなければなりません』。ジャーナリストが一番嫌がる答えですね(笑)。
しかし、問題だと思われている中には、実際には問題ではないものもあると考えています。それは人口減少です。もし日本の人口が1億2600万人から300万人になるのなら、大問題です。でも9000万人に減るのは問題ではなく、むしろアドバンテージです」
ピューリッツァー賞を受賞した『銃・病原菌・鉄』
ジャレド・ダイアモンドの名を一躍、世界に知らしめたのは、ピューリッツァー賞を受賞した著書『銃・病原菌・鉄』(草思社)だった。さまざまな資料を駆使して「西洋が経済的に優位に立ったのは、人種の優劣ではなく地理的な要因だ」と喝破し、「ヨーロッパ人は優秀」という人種差別的な偏見に反論する内容で世界的なベストセラーとなった。
ダイアモンド氏は、ハーバード大学で生物学、ケンブリッジ大学で生理学を修めたあと、進化生物学、鳥類学、人類生態学へと研究領域を広げた。複数の言語を操り、パプアニューギニアで長年のフィールドワークを続けるなど、学際的な研究で得た独自の視座による著作はいずれも世界的に高い評価を得ている。
最新刊は『危機と人類』(日本経済新聞出版社)。これまで国家はいかに危機を乗り越えたのかを幅広い事例で検証し、今、人類が直面する危機にどう立ち向かうべきかについての示唆に富む一冊だ。
労働人口の減少で日本の国力は削がれる?
気候変動や格差の拡大などの世界的な危機に加え、日本は人口減少、少子高齢化、男女不平等、近隣諸国との関係、資源不足、長引く不況など独自の問題も多く抱えている。中でも、大きな問題とされているのが少子化に伴う人口減少だ。労働人口の減少は経済力の低下につながり、日本の国力を削ぐ危険性があるとされる。
しかし、ダイアモンド氏は人口減少については非常に楽観的だ。それはなぜか。