かつてわが子との2度の死別を経験し、妊娠恐怖症に陥った声優の大山のぶ代さん(90歳)と砂川啓介さん(2017年逝去)夫妻。その後、大山さんは浮気を認める態度を見せるも、いざ砂川さんが実行に移すと、自体は思わぬ結果に……。砂川さんが支払った「浮気の代償」とは? 著書『娘になった妻、のぶ代へ』(双葉社)より一部抜粋してお届けします。(全2回の1回目/後編を読む)

大山のぶ代さんの最愛のパートナーで、2017年に亡くなった俳優の砂川啓介さん。彼が支払った「浮気の代償」とは――。©文藝春秋

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娘が亡くなって以来、寝室は別々に

 おしどり夫婦――。

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 僕たちは長いこと、そう呼ばれてきた。

 確かに僕たち夫婦は仲が良い。そりゃ、他愛もないことで口論になることもあったし、世間一般の夫婦がそうであるように、些細なケンカから“離婚危機”に発展したこともあった。カミさんが、母親から受け継いだという漬物の樽を抱えて、家出したこともあったっけ……。

 でも、二人ともネチネチ引きずらない性格ということもあって、すぐに仲直りもできた。だから、真剣に離婚を考えたことは一度もない。

 二人の共著で料理本も出版しているし、夫婦でのテレビ出演や講演の依頼も数えきれないほど受けてきたので、世間が「おしどり夫婦」のイメージを抱くのも当然かもしれない。

 だが、「正真正銘のおしどり夫婦か」と問われると……頷ける自信はない。

 実は、僕たちは娘の絵梨加を亡くして以来、今日に至るまでずっと、寝室を別々にしている。そう、いわゆる“夫婦生活”がまったく存在しなかったということだ。