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かけそば320円……東京の“湾岸タワマン”街で23年続く「ポツンと一軒そば」が名店すぎた

2020/02/04

売れ筋は「かき揚げそば」「カレーそば」「もりそば」……

 着いたのは午後3時半過ぎ。ちょうどお客さんが切れたところで店主の「てっちゃん」こと中林輝男さん(65歳)ひとりだけだった。奥さんと二人で切り盛りしているそうだ。

 売れ筋は何か聞いてみると「かき揚げそば」「カレーそば」「もりそば・ざるそば」あたりだというので、まず「かき揚げそば」(420円)を注文してみた。

 すると、天水に野菜を入れて衣を軽めにからめて、フライヤーに投入した。注文都度揚げの天ぷらである。

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「てっちゃん」のメニュー。丼ものやセットも多い
店主のてっちゃん。お店は奥さんと二人で切り盛りしている

なぜ湾岸エリアで立ちそばを始めた?

 そもそも、なぜ、この場所でポツンと一軒そば屋を始めたのか。天ぷらが揚がる間、店主にお店の背景などを聞いてみた。それがなかなか興味深い内容だった。

 この東雲の場所はもともと店主の実家だった。ご両親はここで精肉屋さんをやっていたそうだ。小さい時からこの街の人にかわいがってもらって、ここが好きな場所だそうだ。昔はこの豊洲・東雲のあたりは、大きな工場や倉庫しかない工場地帯で、食べるところが少なかった。だから、何か飲食店をやりたかったという。

 そば屋を始める前はこの場所で弁当屋を11年やっていた。なので店主は大抵の料理はできるとのこと。そしてそば屋がなかったので始めたということらしい。

 メニューをみると丼物が多く、焼肉丼、かつ丼、のり唐丼などの肉を使った料理が充実している。これも精肉屋さんだった名残だろう。ミニ丼とそばのセットメニューも人気だそうだ。そうこうしているうちに、「かき揚げそば」が出来上がった。