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近年になって加速した家庭内の家事育児分担

  家事や育児は長らく女性の仕事だった。しかも日本では、諸外国と比べても行政のサポートが薄く、保育サービスや児童手当などの家族関係社会支出の対GDP比は、フランスの2.92、イギリスの3.79(ともに2013年度)とくらべて日本は1.31(2015年度)。内閣府のホームページでも、国際的に見て低水準であると指摘されている。しかしここへきて、家庭内分担の動きが少しずつ加速しているのだ。

杏。3人の育児を一手に担ってきた ©文藝春秋

「女性たちは夫の実家の面倒も見ながら、自分の家庭を守り、男女雇用機会均等法が成立した1985年頃からは企業で働くことも求められてきたわけです。そして女性たちの献身に国も頼って来ました。しかしこれは明らかにオーバーワークです。社会学者・ホックシールドは共働き世帯で家事や育児を抱える大変さを表して、昼間の仕事に続く『第二の勤務』と呼んでいます。共働き社会で、女性は仕事場でも家でも労働をし続けてきた。

 しかしここへきて、急激に家庭内の勤務を夫婦で分担しようという動きが出てきています。内閣府によれば2016年の6歳未満の子供を持つ夫の家事・育児関連時間は1日当たり83分。先進国中最低の水準にとどまっている一方で、2011年の調査に比べると16分も増えています。男性の”勤務時間”は今、少しずつ増えていっています」(永田氏)

男性が弱音を吐くとSNSは炎上

  この現状に戸惑いを抱えている男性も少なくない。

「従来通りの“大黒柱”が求められる一方、家事育児に関わる“イクメン”であることも求められている。社会制度の整備が追いついていない中で家庭内での役割分業は変化し、男性は家族の置かれている状況のつらさ、厳しさに気づきつつあるのではないでしょうか」(同前)

  一方で永田氏は「この苦しみは女性がこれまで経験してきたことでもある」と続ける。

「女性たちは逃げ出したくても、自分が逃げれば子どもが死んでしまうかもしれない現実ががありましたから、否が応でも向き合わざるを得なかった。それだけに男性が弱音を吐いたところで、女性たちからは『なにをいまさら』と共感されづらく、SNSに投稿しても炎上してしまいます。辛さを吐き出しにくい状況がまた、男性の生きづらさに繋がっているのです」(同前)
 

家事育児の家庭内分業が加速(※イメージカットです) ©iStok

  大黒柱として家族を養うための収入を得ることと、イクメンとして家事育児を妻と協業することも求められる現代の夫たち。なにかと責められることが多い彼らだが、家事育児に時間を割けない理由もある。男性学を研究する大正大学心理社会学部の田中俊之氏が語る。

「学校で男女ともに技術と家庭科の授業を受けるようになって約25年。今の子育て世代の多くは、学生時代から『男性も女性も仕事をしつつ、家事・育児も担うべきだ』という通念を多かれ少なかれ意識したことがあるでしょう。

  一方で、いまだに男女の賃金格差は埋まっていません。平成の前半に共働きの世帯数は半数を超え、いまでは約1200万世帯になっていますが、いまだに女性の賃金は男性の7割ほど。育休や時短勤務で収入が減ることもありますし、女性が働き方を制限した方が家計への影響は小さい。夫婦の意思に関わらず、夫がメインで働いて奧さんは家事育児を担うという形が『合理的』になってしまう。社会の仕組みの方が追いついていないのです」(同前)