空気が読めない、コミュニケーションが円滑にできない自分は、もしかして発達障害? そんな疑念にとらわれ、精神科の門を叩く人が増えているという。その流れを受けてか、ASD(自閉症スペクトラム障害)とADHD(注意欠如多動性障害)の差異など、発達障害の定義と実際を最新の医学の成果に基づき丁寧に解説した新書が好調だ。
「ある時期から、大量殺人や猟奇的な殺人事件が起きるたび、犯人が発達障害だと報道されることが増えました。この言葉が乱用されるようになったのは、その影響ではないか。著者からそんな話を聞いて、では、正しい知識を広めるために本を書いていただくのはどうか? と考えたのが、企画のきっかけです」(担当編集者の西本幸恒さん)
確かな学識に基づく本だが、硬さはない。臨床例から大村益次郎、アンデルセンといった歴史上の偉人、はたまたBBCドラマ『シャーロック』のホームズといったフィクションの登場人物まで、具体例が豊富に挙げられている。また著者は、日本で初めて、発達障害のためのデイケアを始めた人物でもあり、発達障害の人が社会に適応する筋道も示されている。漠然と不安を感じている人には、まさにおすすめの内容だ。
「読者の男女比は半々で、お子さんや職場の部下に発達障害を疑う50代、当事者として不安を感じている20代・30代の読者が多い印象です」(西本さん)
2017年3月発売。初版1万2000部。現在7刷10万部