最初にお断りしておかなければならない。
今日、千葉市の幕張メッセで開かれた東芝の第178期定時株主総会のモニタールーム(株主でない記者は会場には入れないので、ここでビデオ中継を見る)に、私は入れなかった。前回までは入り口で名刺を渡せばフリーの記者も入れたのだが、今回から事前登録が必要になったのだという。
仕方がないので、中の様子は後で顔見知りの記者に聞くことにして、私は総会の開始前と終了後、路上で株主を捕まえて話を聞く「ぶら下がり取材」に専念した。
「せめてちゃんと売ってくれよ」半導体OBの嘆き
●男性・東芝OB(半導体部門)
――わざわざ幕張まで足を運ばれた理由は。
「だって、何一つうまくいっていないでしょ。僕がいた半導体部門の売却だって、延期、延期でちっとも前に進まない。一体どうなってるのかと思って」
――古巣の半導体事業が売却されてしまうのは、寂しくないですか。
「そりゃ、寂しいよ。でも売らなきゃしょうがない。だったら、せめてちゃんと売ってくれよと。ドタバタぶりが目に余る」
●70代とみられる男性
――今日は何を質問されますか。
「当ててくれないだろ。僕は親父の仇を討ちにきたんだ。親父は東芝の中間管理職でね。その時も今みたいに経営が傾いて、土光(敏夫)さんが石川島播磨重工から再建にきたんだ。子供ながらに大変そうだったのは覚えているよ。親父たちが苦労して、ようやっと立て直したのに、またこのザマか。親父もきっと悲しんでいるよ」
――東芝の経営危機は石坂(泰三)さんの時からですよね。何度も繰り返している。
「そうだよ。一体、何を学んだのかね」
――東芝株はまだ保有されているんですか。
「もう売った。売る前に手続きしたから、総会には出られるんだ」
――もう株主ではないのにわざわざ。
「親父の代わりに見届けてやろうと思ってね。この会社は一体これからどうなるのか」
●男性・東芝OB(エレクトロニクス部門)
――OBの方ですか。
「ええ、まあ」
――後輩の経営者に言いたいことは。
「とにかく、会社を残して欲しいですよ。東芝という会社をね。半導体メモリを売って、海外の原子力からも撤退して、売上高は3兆円も残らないかもしれないが、それでも会社を残して欲しい。残る社会インフラ事業でなんとか生き延びて欲しいです」
――東芝株はまだお持ちですか。
「売れないよ。売れるはずがないじゃないか」
●60代とみられる男性
「あ、大西さん。去年も会いましたね。記事読んでますよ。『イメルダ夫人』(文藝春秋6月号「スクープ 東芝前会長の『イメルダ夫人』)も読んだよ。よく取材してるね」
――ありがとうございます。今日は決算もメモリ事業の売却も間に合わなかったので、株主総会といっても議論することがないのでは。
「そうだよな。でも志賀(重範、前会長)さんは、出てきてちゃんと説明するべきだよ。東芝がこんなことになったのは、ウエスチングハウスで失敗したからで、ウエスチングハウスを経営していたのは志賀さんだろ。その人が病気とかいって、雲隠れしちゃうのは、おかしい。志賀さんは確か去年の株主総会にも出てこなかったよな」