1997年7月1日に香港の主権がイギリスより中国に移ってから、きょうで20年が経った。アヘン戦争(1840~42年)の結果、香港がイギリスの直轄植民地となってから155年、1984年に調印された中英共同宣言にもとづいての返還であった。
香港島・湾仔(ワンチャイ)の香港会議展覧センター新館で行なわれた主権移行式典の会場には、7月1日午前0時(日本時間、同日午前1時)、イギリス国旗に替わり中国国旗が翻った。主権移行の瞬間を挟んで、英中両国を代表し、チャールズ皇太子と江沢民国家主席が演説。チャールズ皇太子は「香港は東洋と西洋がいかに共存共栄できるかを世界に示した」と植民地統治を総括し、香港の繁栄を讃えたものの、アヘン戦争への言及はなかった。これに対し、江主席は「中国のお祝いであるとともに、平和と正義の普遍的大義にとっての勝利である」と高らかに宣言、そこには屈辱の歴史から香港を勝ち取ったとのニュアンスが強く込められていた。
返還前の1990年に制定された「香港特別行政区基本法」により、香港は「一国二制度」のもと、返還後も50年間は資本主義制度を維持するとともに、外交と軍事をのぞき「高度な自治」が保障された。だが、香港の民主派政党や市民は、中国政府による活動制約を懸念し、前日の6月30日から足かけ2日にわたりデモや集会を行なっている。
植民地時代を通じてアジアの金融・貿易センターであった香港だが、返還後の中国の急速な経済発展にともない地位が低下、近年は経済を中心に中国との一体化が進む。保障されたはずの自治も揺らぎつつある。今年3月に行なわれた行政長官(香港のトップ)選挙は、それまでの一部の代表者による間接制限選挙に代わり、全有権者が参加する直接選挙になるはずだった。だが、中国政府はこれに対し2014年、自由な立候補を阻む措置を決定する。この一件もあり、香港では中国に対する反発も強まっている。今年の返還記念式典には、習近平国家主席も出席する予定だが、はたして香港市民はどう迎えるのか。