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「この『変態仮面』に出てる子、いいんじゃない?」

―― この番組でもドキュメント要素はあったんですか?

佐々木 実は、あの番組は“完全密室”なんです。司会者もいない。いるとしたら哲学者の國分先生や千葉(雅也)先生。想定台本は事前に僕が書いているんですけど、収録が始まったらノンストップ。普通はADがカンペで指示を出したりするんですが、それもない。こちらでコントロールできない。だから、マキタスポーツさんなんてものすごく頭がいいので、収録開始5分くらいでその回の結論のようなことを言っちゃったりするんですよ!(苦笑)。

 でも、なんでそんなリスクの高いことをやるかというと、ホンモノの言葉を撮りたいから。清水富美加さんとマキタさんは、打合せも無しでいきなり連れてこられて、ざっくりとしたテーマだけ伝えられて、収録に臨む。その方が、素材の力、言葉の力が生まれるんです。でも、そのためには番組制作側の綿密な準備が必要です。國分先生も家でみっちり進行の練習をしてくれましたし、清水さんには「絶対に分かったフリはしないでください」と伝えていました。こういう空間や状況をいかに設定できるかが、ドキュメンタリー、バラエティに関係なく「演出」なんだと思います。

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『哲子の部屋』 左から國分功一郎、清水富美加(当時)、マキタスポーツ ©NHK

―― 今考えると、絶妙なキャスティングですよね?

佐々木 実は『哲子の部屋』の第1回目は吉木りささんに出演いただいたんですけど、とある事情で出られなくなってしまって「どうしよう……」と困っている時に、妻が「この『変態仮面』に出てる子、いいんじゃない?」と清水富美加さんの名前を挙げたんです。まだ、NHKの連続テレビ小説『まれ』に出る前でしたけど、確かにしゃべりもうまくてバラエティの才能もありそうだと。それで、清水富美加さんに出演してもらって。それがすごくよかったんです。年に1回の放送でしたけど、彼女も『哲子の部屋』をすごく大事に思ってくれて。だから、また再開したいなぁと思っていたんですけどね……。

―― 『変態仮面』を取り上げたのは、NHK的にはどうだったんですか?

佐々木 企画時はいろいろ言われて、それなりに大変でした(笑)。民放でもほとんど流せなかった『変態仮面』の映像をNHKで流せたので、妙な手ごたえはありました(笑)。