加計学園の獣医学部新設をめぐる問題は、文部科学省の前川喜平前事務次官の参考人招致にまで発展した。この問題に今年の初めから疑義を呈してきたのが、自民党のベテラン、村上誠一郎衆院議員だ。1986年の初当選から30余年、一度も自民党を離党せず、野党の内閣不信任案に同調したこともない。「ミスター自民党」を自負する氏が「文藝春秋」のロングインタビューに応じ、「人心を一新するしかない」と安倍政権を批判した。
小泉政権時代の2004年に構造改革特区担当の国務大臣を務めていた村上氏は、「そもそも『特区』とは行政的な実験の場です。ある特定の地域で規制緩和をした結果、うまくいけば全国展開するという仕組みなのです」と解説する。全国的に獣医師が「余っている」状況を鑑みれば、特区で獣医学部設置を認める根拠はまったく見当たらないというわけだ。
加計学園が獣医学部新設を目指している愛媛県今治市は、村上氏の地元でもある。
「今治市は現在900億円もの借金を抱えています。ところが、建設予定地の無償譲渡に加えて、今治市の予算から96億円の補助金まで支出することになるという。特区申請の経緯に疑義があり、これだけ多くの国民が首を傾げる状況で、果たして100人余りの若者(定員160名の計画)が獣医になるためにやってきて、今治市に経済効果をもたらすことなどあり得るのか。加計学園が自前の予算でやるならまだしも、そんなことに今治市がお金を出すなど到底考えられないことです」
「反アベノミクス勉強会」とも報じられた「財政・金融・社会保障制度に関する勉強会」を、この5月に事務局長として立ち上げた村上氏。同氏による、安倍政権下での強引な国会運営や改憲提案、経済政策などに対する痛烈な諫言は、「文藝春秋」8月号(7月10日発売)に10ページにわたって掲載されている。