30代の8年間は本当に体調がよくなかった
――吉田豪さんの『サブカル・スーパースター鬱伝』の文庫版(徳間文庫カレッジ)では、かつて精神的なストレスから、長らく体調不良に陥っていた時のお話をされていましたね。かなりしんどい状態だったにもかかわらず、あれだけの数の作品に出演されていたのは驚異的です。
ユースケ あの本で少し誤解を生んでしまいましたが、僕は、正確には鬱ではなかったんです。鬱って本当に大変で、まず仕事なんてできませんからね。家から出られないし、顔付きだって変わってしまう。僕が鬱だなんて言ったら、本当に鬱になった人、それを克服した人に申し訳ないですよ。とはいえ、ストレスが原因で、30代の8年間は本当に体調がよくなかったのも事実。鬱未満なんだけどひどく調子が悪くて、仕事が大変という人も少なからずいる――自分の経験を通して、そういうことをみんなに知って欲しかったから、あのインタビューは引き受けたんです。
本名の僕とは、またちょっとだけ違う人間
――そうした大変な時期があった一方で、バラエティでのユースケさんは、ある種の適当さというか、飄々とした雰囲気もありますよね。今はお仕事と精神のバランスみたいなものは、どのように取っているのでしょうか。
ユースケ 僕は「ユースケ・サンタマリア」として仕事をしているわけですが、普段の本名の僕は、それとはまたちょっとだけ違う人間です。つまり、ユースケになる時に、ある意味スイッチが入ったような状態になるわけです。もともと僕はすごくシャイな人間だけど、ユースケでいる時はそのキャラに乗っかって、逆に「みなさん、どうもー!」みたいなハイテンションで出ていける。あのキャラでいることで許されることもたくさんあるし、すごく得なんです。その点では、ユースケというキャラにものすごく助けられていると言えますね。まあ、なんでこんな変な芸名つけたかな、とちょっと後悔もしていますけど(笑)。
――キャラを設定することで、仕事の自分と、本当の自分とのメリハリがつくわけですね。
ユースケ そうです。あと、役者としては、ユースケのパブリック・イメージをすごく活用していると思う。僕は、普段バラエティ番組とかでバカなことをやっているぶん、お芝居で真逆のキャラクターを――例えば、めちゃくちゃサイコパスな役とかをやると、ギャップがすごいから観客に強いインパクトを与えることができる。ギャップ萌え的な感じになるわけです。もっとも、これは諸刃なところもあって、シリアスなことをやっていても、そう見えないという危険性も孕んでいる。なので、芝居はものすごくちゃんとやらなきゃいけないわけですけれども。
――仕事をしている自分に助けられている、と。
ユースケ 使い分ければいいんですよ。仕事モードの時は、「今は仕事用の自分」と考えればいい。全部ひとつの自分で回すとなると、いろいろ辛いこともあるじゃないですか。一度調子悪くなったことのある身からすると、その辺りに仕事でストレスを抱えてしまう原因があると思うんです。僕だったら、今日はバラエティ番組だから、バラエティモード、オン! 今日は役者だから、役者モード、オン! そこまで厳密なものではないけど、そんなふうにしてた方が楽だし、何より楽しく生きていけると思うんですよね。
写真=釜谷洋史/文藝春秋