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2020/02/12

source : 週刊文春デジタル

genre : ニュース, 社会

神戸山口組がついに反撃に出た、との見方も

 中野会といえば、1997年に五代目山口組若頭、宅見勝を襲撃して射殺した当の組織。そんな武闘派組織の出身ということだ。すでに組を抜けたとは言え、ヒットマンが組織への影響を最小限にとどめるために脱退を偽装するのはよくあること。谷口が神戸山口組のトップ、井上邦雄組長と親しい、という情報も一緒に駆け巡り、神戸山口組がついに反撃に出た、との見方も出た。

 ただ、暴力団関係者は「普段なら回ってくるはずの神戸側の威勢のいい声明などが聞こえてこない」と話す。事件の状況を子細に見ると、本気度に疑問符も付いてくるのだ。

 高山の自宅とはいえ、特定抗争指定暴力団に指定されたいま、組員が多数たむろすることもなく、目の前には警察官が常駐して警戒している。谷口は隠すこともなく拳銃を取り出し、誰も外にいない自宅に向かって正面から発砲。さして抵抗することもなく銃刀法違反容疑で捕まったというから、はなから門に穴を開けるだけの行動だったようにもみえる。何度も命を奪われた神戸山口組からの反撃にしては、少し「優しすぎる」のだ。

 ある暴力団関係者が見立てるのは、「老いた元組員の暴発」説だ。「収入もなく、老後の生活に希望が持てず、刑務所に面倒をみてもらいたくなったのではないか」(同前)という。

 井上の個人的了解を取ったという可能性は残るが、本格的な反転攻勢の狼煙と解釈するには、たしかに迫力不足ともいえ、後に続く動きも見えない。

六代目山口組の司忍組長 ©時事通信社

 暴力団は既存の社会システムに反旗を翻す代わりに、その恩恵にもあずかれない。当然、年金もない。脱退すれば生活保護ぐらいは受けられるが、基本的に社会保障の枠外にいることに変わりはない。老いた元組員の面倒を一律にみるほど、現代ヤクザの懐は甘くはない。元組員が刑務所生活というほぼ唯一の「社会保障」を求めたという説には、妙に説得力がある。