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「NYよりもソウルの方が生活費がかかる」のはなぜ――『パラサイト』から考える世界経済

タイミングや運によって勝敗が決定する残酷な経済社会

2020/02/14

なぜ金持ちはボランティアや贈り物をするのか

 前述の年間授業料が300万円もするインター校では、貧しい家庭へのボランティアが盛んに行われています。貧しい家庭に食べ物の配給をするボランティアをしたという外国人の友達が写真と動画を送ってくれました。

 小学生の子供とその親達が夕食の準備をして、貧しい人達が住んでいる国の施設に食事を手渡しにいくのです。子供達に貴重な体験をさせることができてよかったと富裕層の親は言います。日本では生活保護としてお金で支給されますが、国によってはフードスタンプや住宅の提供など現物支給の場合もあります。

©iStock.com

 なぜお金持ちはこのようなボランティアをするのでしょうか。また、地域によってはお世話になっている人全員にクリスマスプレゼントをあげたり、旧正月に紅包(お年玉)をあげたりする習慣があります。

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「金はまぎれもなく昇華のシンボルであり、お金とは『濃縮された富であり、濃縮された富は濃縮された罪である。罪は本質的に汚らわしいものである』こうみてくると、クリスマスに贈物をするというのは、その一年間にため込み、濃縮された罪の一部を吐き出す手段であるといえる。ここで罪というのは、とくに何かに対する罪を意味するわけではなく、人間の原罪のことである」

 アダム・スミスの著書『マネー・ゲーム 情報に賭ける社会』ではこのような記述があります。

タイミングや運によって勝敗が決定する残酷な経済社会

 お金に意味を持たせるのは議論の余地がありますが、一部の大成功の裏には無数の大失敗があり、タイミングや運によってその勝敗が大きく変わる残酷な社会になっています。また、どんな人にとっても、一寸先は闇であって、いつ転落するか分からない世の中です。富裕層であっても革命やデモなど庶民の反逆に遭遇するリスクもあります。

「NYよりもソウルの方が生活費がかかる」のはなぜ――『パラサイト』から考える世界経済

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