アカデミー賞4冠の『パラサイト 半地下の家族』が日本でも話題になっています。
元々は防空壕だったという半地下の低所得者向け住居に暮らし、全員失業中で低賃金の内職などでなんとかその日暮らしをしている4人家族。知人の紹介で普段は交わることのない大金持ちの家に近づくことになります。
私も海外で映画を拝見したのですが、映画の中で描かれる貧富の差とその闇が興味深く、世界中の都市で起きている問題を象徴していると感じました。
世界の大都市で起きている貧富の差
イギリスの経済誌『エコノミスト』の調査部門である、「エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)」による2019年「世界生活費ランキング」では、1位にシンガポール(シンガポール)、パリ(フランス)、香港(中国)、4位にチューリッヒ(スイス)、5位にジュネーブ(スイス)と大阪(日本)、7位にソウル(韓国)、コペンハーゲン(デンマーク)、ニューヨーク(アメリカ)、10位にテルアビブ(イスラエル)、ロサンゼルス(アメリカ)となりました。
なぜ、大阪(年度によっては東京もランクイン)やソウル(韓国)などアジアの都市がアメリカのニューヨークやロサンゼルスのような大都市よりも生活費が高いという結果になるのでしょうか。
もちろん為替レートの影響もありますが、この調査は、企業が駐在員や出張者への手当を計算したり報酬パッケージを設計したりするのに役立つことを目指したものです。そのため、庶民の生活というよりも外国人駐在員が住んだ場合の生活費の高さを表しています。
同じ国に二つのマーケットが存在する
日本の場合だと麻布に住んでいて、職場も六本木、会員制クラブを利用し、インター校に子息を通わせているといった外国人駐在員の生活を想像してみるとよいかもしれません。普通に生活をしていると接する機会もあまりないでしょう。
上位に挙がる国は不動産価格が高く、インター校の学費が高いことが特徴です。都市での格差について、生活費ランキングが1位で、私が住んでいるシンガポールを例にあげましょう。
海外の駐在員は企業や役職にもよりますが、月60万円以上する高級コンドミニアムに住んでいる場合もあります。また、子供のインター校の学費も年間300万円程度など非常に高額です。ただし、地元民の小学校の授業料は原則無料(雑費はかかる)で、自国民向けのアパートは外国人向け住宅より安価です。洗濯物を長い物干し竿にかけて窓から出している風景をメディアなどで見たことがある人もいるでしょう。
外国人駐在員や地元の富裕層が行くレストランは昼にハンバーガーと飲み物を飲食するだけでも3000円前後かかることもあります。これに対して地元民の行くホーカー(屋根付きの屋台のようなもの)は500円前後から。私は両方好きなのですが、レストランによって明らかに客層が違います。
同じ国に二つのマーケットが存在するのです。