「最初に台本を読んだとき、『スタンド・バイ・ミー』みたいな話だなと思いました。14歳が旅する話は、やっぱり泣けて面白い。僕自身はその年頃いじめられっ子で、でもクラスで無視されたりしても全然気づかないような奴でしたが(笑)」
さまざまな映画・ドラマでハッとするような存在感を放つ柄本時生さん。世界中で愛される児童文学が原作の、ドイツで大ヒットした舞台『チック』の日本初演(小山ゆうな演出)で、タイトルロールの少年チックを演じる。
「コンビを組む篠山輝信さんが、ものすごい量の台詞をしゃべる役なんです。そういうシーンで僕がどう絡むか、これから演出と一緒に作っていくのが楽しみです。僕はちょうど14歳の頃にこの仕事をはじめてて、現場で大人たちと映画の話ができるのがすごく嬉しかった。当時、マキノ雅弘監督の『鴛鴦(おしどり)歌合戦』や『次郎長三国志』にはまってたんですよ。大人と対等にしゃべってる俺、かっこいいなと思ってた(笑)」
父・柄本明と演技の話をすることはあるのだろうか。
「もともと宮大工になりたかった僕は、俳優になりたいと思ったことが一度もないんです。親父の縁で仕事を頂くようになりましたが、アドバイスを貰ったことはありません。普段『声を探せ!』とか『客は敵だと思え!』と言っている姿を見ているくらい。いつかその意味が分かる時がくるのかもしれません(笑)」