全国のサケは約半数にまで減少している
ところが、漁獲量が少なくなっているのは魚津市だけではありません。農林水産省の発表しているデータ(図1)によると、平成28(2016)年以降、全国の河川におけるサケの漁獲量は、約半分ほどにまで減少していることがわかります。
そのため、松村さんたちは国が定めた漁獲量の目標を達成するために、あらゆる手を尽くしています。特に、捕獲した野生のサケから卵と精子を取り出し、人工的に受精をさせて生まれた稚魚を放流する「孵化放流」は、彼らが特に力を入れている取り組みの一つ。
採卵場で受精してから、誕生した稚魚が放流できる大きさになるまでには3ヵ月ほどかかります。その間、卵が安定して育つように常に水を流しながら、こまめに健康状態をチェックし、死んだ卵があればひとつひとつ手作業で取り除いていきます。
去年は約170万粒を採卵して稚魚を孵化させましたが、放流した稚魚が成長して、再び川に遡上して戻ってくる「回帰率」はわずか0.03%。
人手不足の中、ほとんど無償労働で100万匹を放流しても300匹ほどしか帰ってこない現状に、漁協組合の人たちは頭を抱えています。
なぜサケが減っている?
そもそも、なぜ日本で獲れるサケの数が激減しているのでしょうか。水産学者であり、北海道大学名誉教授の帰山雅秀さんは、「地球温暖化にともなう海水温の上昇が影響している」と指摘します。
これまで、日本のサケには幼魚のうちに沖合へ移動する「回遊ルート」がありましたが、表層水温の上昇により、2000年代以降、適切な時期に海を移動することが難しくなりました。また、夏は暑く、冬は寒い近年の傾向から、サケは適温下での十分な成長ができないまま沖合へ移動しなくてはならず、日本沿岸の滞在日数は短縮、結果的に生残率が下がったことが明らかになったのです。