――サケが、獲れない。

 そう嘆くのは、富山県魚津市にある呉東内水面漁協組合の漁師たち。彼らは毎年秋になると、網を使った「鮭やな漁」という漁法で、繁殖のために川に遡上してきたサケを獲っています。

漁師たちが川幅いっぱいに網を持ち上げて

この日、朝から松村良一さんの案内のもと訪れたのは、富山七大河川のひとつである「片貝川」。

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水面に目をこらしていると、時折「バシャッ」としぶきがあがり、流れに逆らって勢いよくサケが泳いでいるのがわかりました。「いたいた! あそこにいる!」と大興奮の取材班を横目に、漁師たちは7人がかりで川幅いっぱいに網を持ち上げながら、追い込むようにゆっくりと歩を進めます。

 
 

 網の中からまだ元気なサケと、すでに繁殖を終えてボロボロになったサケを選り分け、1匹ずつ抱え上げてかごの中に移していきます。この日の漁で獲れたのは、およそ30匹の親魚。全長は70~80cmで、卵で腹部が膨らんだメスも含まれていました。

 しかし松村さん曰く、この日は「例年に比べればさっぱり」の出来。長年鮭やな漁に携わっている漁協組合の方々によれば、以前とは明らかに川の様子が違うのだと言います。

「史上最悪」の事態に

「近年、サケの漁獲量は年々減ってきています。今年は去年の3分の1、去年は一昨年のさらに3分の1しか獲れていないので、2年間で9分の1まで減ったことになりますね。今日は運がいいです。これでもかなり獲れている方ですよ」

 

 例年秋を迎える頃には、片貝川は遡上したサケで溢れかえっていたそうです。大量のサケを引き揚げるにも相当な労力がかかるため、数人がかりで毎日川に入っても、次から次へと仕掛けにサケがかかり、作業に丸一日かかることもめずらしくなかったのだとか。しかし、サケの数は目に見えて少なくなり、最近では、川に入る時間は30分もあれば事足りてしまうほどに。

 魚津市のサケの漁獲量は、松村さんが知る中でも「史上最悪」になってしまったのです。