そこに、6月の日本選手権100m、200m 2冠のサニブラウン・ハキーム(東京陸協)、同月に追い風参考ながら9秒94をマークした関西学院大3年の多田修平が加わった。リオ五輪経験者の桐生祥秀(東洋大)と藤光謙司(ゼンリン)もリレー要員としてメンバーに入っている。
リオ五輪での戦いの真相は『四継 2016リオ五輪、彼らの真実』(文藝春秋)として8月3日に発売される。リオでは過去最速の走力、個人種目からリレーへの準備、リザーブ選手の思い、選手やスタッフ同士の何気ない会話、それらすべてが奇跡のように1つにつながり、日本男子トラック種目で最高成績となる銀メダルに結実した。
決勝のタイムは日本が37秒60。金メダルのジャマイカが37秒27で、その差は100分の33秒だった。ロンドン世界陸上でジャマイカに勝つシナリオを描くなら、日本は完璧なバトンワークで序盤からリードを奪う必要がある。ボルトが入るであろうアンカーまでに王者を慌てさせ、バトンのもたつきを引き出せるかがポイントになる。
1走はスタートとカーブでの加速を得意とする選手。2、3走は助走を含めると他の区間より走る距離が長くなりがちなので後半もスピードを維持でき、かつバトンの受け渡しの技術が安定している選手。4走は横並びの競り合いに強い選手が適任だ。
1走は代表でのリレー経験が少ない多田かサニブラウンが候補。2、3、4走は銀メダルメンバーである飯塚、桐生、ケンブリッジの並びが有力だ。
世界陸上の壮行会では、日本代表選手団の伊東浩司監督も自信をもってこう語っている。
「大きな核はサニブラウンと桐生になる。選手層に厚みも出ているし、選手の目標に合わせられるよう、しっかりサポートしたい」
日本国内で鎬を削ってきたライバル同士が1つのチームとなって、さらなる強敵に挑む四継。「ボルト伝説」の最終章に、日本人スプリンターたちはどんな形で爪痕を残すだろうか。
(宝田将志/産経新聞記者)
1977年5月17日、千葉県生まれ。早稲田大学教育学部卒業後に産経新聞社に入社し、社会部を経て2009年から運動部へ。プロ野球や大相撲などの担当を歴任し、ロンドン五輪後の12年より陸上競技の担当になる。最初に取材に行った13年の織田幹雄記念国際陸上競技大会で、桐生祥秀の10秒01に遭遇し、陸上競技の魅力に取り付かれる。現在は他に体操競技などの取材にも携わっている。