今年7月27日、民進党の党首辞任を電撃的に発表した蓮舫。その一因となったのは、昨年秋の党首選のときからくすぶっていた「二重国籍」問題だった。ネットを見ると、もっぱらこの件を問題視したのは保守系の識者やネットユーザーであり、彼らのなかには(蓮舫の旧国籍は台湾(中華民国)にあったにもかかわらず)「蓮舫は中国のスパイだ」といった主張を展開する人も多くいた。

7月27日、記者会見で辞任の意向を表明する民進党の蓮舫代表 ©共同通信社

 この「二重国籍」問題については、そもそも同件を「問題」と考えるか否か自体がイデオロギーの踏み絵のようになっていて取り扱いが面倒なため、今回は言及しない。筆者がこの記事で考察してみるのは、蓮舫はそもそも「中国のスパイ」になれるような人材だったのか、という疑問である。

蓮舫の著書『一番じゃなきゃダメですか?』を読んでみよう

 ここで紐解くのが、蓮舫が旧民主党政権下で事業仕分けに携わっていた2010年6月に刊行した著書『一番じゃなきゃダメですか?』(PHP研究所)だ。政治家としての彼女の生き方や政見、華人(台湾人)としてのルーツが垣間見える、現時点でほぼ唯一の書籍である。

ADVERTISEMENT

 

 同書のなかで、かつて北京への語学留学経験も持つ政治家・蓮舫は中国についても大いに語っている。だが、パッと目を通しただけでもその内容がかなりメチャクチャなのだ。以下、順を追って見ていくことにしよう。

<1.中国共産党のトップの名を間違える>

『一番じゃなきゃダメですか?』は全6章からなるが、特に興味深く読めるのは、彼女の生い立ちから結婚・出産までを描いた2章と3章だ。1967年、日本在住の豊かな台湾人バナナ商人の家に生まれたこと、子どもの頃は夏休みのたびに台湾の最高級ホテル・圓山大飯店に2ヶ月ほど滞在する生活を送っていたこと、青山学院大学入学後に300万円のフェアレディZが欲しくなったのでキャンギャルになったこと……と、なかなか庶民離れした話が続く。

 幼少期以降、しばらく中国や台湾についての記述は出てこないのだが、蓮舫が21歳だった1989年6月に「ニュースにがぜん興味を持つようになった」きっかけとなる事件が起こる。すなわち、中国人民解放軍が学生や市民のデモを武力鎮圧した六四天安門事件だ。