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天安門事件の発端をよくわかっていないらしい

 では、事件の報道に接して「あ、もっと私は勉強しなきゃいけないなって」思った蓮舫は、中国現代史上で最大級の事件である天安門事件をどのように勉強したか。下記に引用したKindle版『一番じゃなきゃダメですか?』の当該部分と、筆者による黄色マーカーを引いた箇所をご確認いただきたい。

「胡耀邦 世界史B 受験」などで検索すると受験参考書や過去問題の記述が引っかかる。まずまず真面目な高校生なら間違えない程度の知識だ。

 ……1989年の学生デモで名誉回復を求められたのは、「趙紫陽」じゃなくて同年4月に病没した胡耀邦だ。趙紫陽は事件発生までは中国共産党中央委員会の総書記(要するに党組織のトップ)だったので、わざわざ学生から名誉回復を求めてもらわなくても、最初から偉い人である。蓮舫はそもそも事件の発端からしてよくわかっていなかったようだ。

「中国の国軍である人民解放軍」というヤバい記述が……

 また、「中国の国軍である人民解放軍」という記述もヤバい。これは有名な話だが、人民解放軍の位置付けは中国共産党の武装部門(党軍)で、彼らは国家の軍隊ではなく(極端に言えば)党の私兵だ。1989年の天安門事件で人民解放軍が一般市民に平気で銃を向けた理由も、彼らの存在目的が国民を守ることではなくて「党」の防衛にあるからである。

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「党の指揮を聴いて敵を打ち倒す」とスローガンが書かれた人民解放軍のプロパガンダ画像。関係ないが、この習近平の写真は修正しすぎである。

 もちろん、中国の指導者の名前や軍隊の性質は、一般人なら知らなくても仕方がない。だが、蓮舫は元ジャーナリストで北京への留学経験もあり、さらに政界入り後は日中友好議員連盟にも所属する「中国通」の政治家だ。しかも、1989年に天安門広場に集まった中国の学生たちと、完全に同世代の華人でもある。そんなバックグラウンドを持つ政治のプロフェッショナル(しかも刊行当時は与党の大臣)が、こんなにユルフワな認識なのはちょっと問題だろう。

 少なくとも、現代中国でもそれなりに高く評価される指導者・胡耀邦の名前を趙紫陽と勘違いしたり、偉大なる人民解放軍の役割を取り違えたりする体たらくの蓮舫が「中国のスパイ」になるには、まだまだずいぶん勉強が必要だろうと思わざるを得ない。