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「一線は越えてない」の一線て何だ?

2017/07/29

安倍晋三 首相
「申請を知ったということにつきましては、先ほど申し上げましたように、1月20日の特区諮問会議でございます」

BuzzFeed NEWS 7月24日

 7月24日、25日の2日間にわたって、「加計学園」問題をめぐる衆議院・参議院予算委員会での閉会中審査が開催された。内閣支持率の急低下に危機感を抱く安倍晋三首相が出席したことで注目を集めた。

「私の友人が関わることでありますから、国民の皆さまから疑念の目が向けられることはもっともなことであります。思い返すと、私のこれまでの答弁において、その観点が欠けていた」という安倍首相の答弁から始まった閉会中審査。一番肝心なところが欠けていたのか! と思わなくもなかったが、「常に国民目線にたち、丁寧の上にも丁寧に説明を重ねる努力を続けていきたい」と続けた。「丁寧に説明」の上を行く「丁寧の上にも丁寧に説明」だ。実際、首相はヤジも飛ばさず、「印象操作」とも言わず、謙虚な姿勢を貫いた。

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 とはいえ、議論は一向に噛み合わなかった。野党側が追及するも与党側が「記憶にない」「記録に残ってない」と繰り返す展開が続く中、多くの人が驚いたのが、国家戦略特区として加計学園が獣医学部の新設を申請しているという事実を安倍首相が「(国家戦略特区諮問会議で加計学園を事業者とすることを正式決定した)2017年1月20日まで知らなかった」という答弁だ。

 ご存知のとおり、安倍首相と加計学園理事長の加計孝太郎氏は「腹心の友」。2013年の第2次安倍政権発足以来、14度も食事やゴルフで接触している。安倍昭恵首相夫人が「男たちの悪巧み」と書いた2015年クリスマスイブの会食はもはや有名だ(なぜか民進党の大串博志氏が提示した安倍首相と加計氏の接触記録にこの日は含まれていない)。ちなみに面会の際の食事代について、安倍首相は「私がごちそうすることもあるし、先方が支払うこともある」と回答したが(ハフィントンポスト 7月24日)、かつて加計氏は「(安倍氏に)年間一億くらい出しているんだよ」と語ったことがあるという(『週刊文春』4月27日号)。それはかなり話を盛ってると思う。

12年間『加計ありき』だったのに、一度も加計氏と話をしたことがないなんて!?

 同時に、加計氏にとって獣医学部新設は長年の念願だった。獣医学部の誘致に取り組んできた加戸守行前愛媛県知事は、「愛媛県にとっては、12年間、『加計ありき』でまいりました」(FNNニュース 7月11日)と語っている。これまで安倍首相は加計氏と一度もこのことについて話したことがないのだろうか。首相は「話は一切ございませんでした」と断言しているが、大串氏ならずとも「にわかに信じられない」と思ってしまう(BuzzFeed NEWS 7月24日)。

©文藝春秋

 さらに、過去の答弁との矛盾がある。たとえば、6月5日の参議院決算委員会では民進党の平山佐知子議員から「大親友である加計さんがずっと獣医学部が作りたいという思いがあったことは当然ながらご存知でしたよね」と質問されて「安倍政権になりましてから、国家戦略特区にその申請を今治市と共に出された段階で承知したわけであります」と答弁している。今治市が国家戦略特区で獣医学部新設を提案したのは2015年6月だった(ハフィントンポスト 7月25日)。従来の説明との整合性を指摘された安倍首相は、「少し混乱して答弁したのは事実で、おわびをして訂正させていただきたい」と釈明している(産経ニュース 7月25日)。

 計画を知らなければ、首相だって便宜を図りようがない。しかし、それは真実なのだろうか? 疑念を晴らすための閉会中審査で、新たな疑念が生まれてしまった。