稲田朋美 防衛相
「昔のように自由な発言もできないし、好きな服も着られない。とても苦しい」
『女性セブン』8月10日号
もうひとつの辞任は、稲田朋美防衛相だ。27日、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)の日報問題をめぐり、陸上自衛隊に保管されていた電子データ隠蔽に関する責任をとる形で辞意を示したことが報道された。28日に行われる日報に関する特別防衛監察の結果公表に合わせた辞任と見られており、同日午後に記者会見が行われた。稲田氏が辞任すると、2012年12月に第2次安倍政権発足後、閣僚辞任は6人目となる。
陸上自衛隊トップの陸上幕僚長・岡部俊哉氏も辞意を表明、防衛事務次官の黒江哲郎氏も混乱の責任をとって辞任する見通しだ。元自衛官で自民党・参議院議員の佐藤正久氏は「陸自のトップと事務方のトップが辞任し、防衛大臣が責任を取らないというのは考えにくい。いろいろ考えた結果なのだろう」とツイッターでコメントした(7月27日)。
「30人以上の大臣に仕えてきたが、史上最低」と防衛官僚
稲田氏の辞任について、防衛省の内部からは「辞めるのは予想通り」との声とともに、北朝鮮の弾道ミサイル発射警戒をめぐる対応にも「トップ不在でも影響ないことの証し」という冷ややかな声が聞かれたという(時事ドットコムニュース 7月27日)。防衛官僚による覆面座談会では「過去二十五年以上三十人以上の大臣に仕えてきたけれど、申し訳ないが史上最低」という発言が飛び出した(『週刊文春』8月3日号)。
稲田氏の辞任は、安倍政権にとってもダメージが大きい。稲田氏は安倍晋三首相と思想的に共鳴し、「将来の首相候補」として重用されてきた。「百人斬り訴訟」の原告側代理人を務めるなど、気鋭の保守論客として活躍していた稲田氏を安倍首相が政界にスカウトしたという経緯がある。稲田氏も「安倍さんがいなかったら私は政治家になっていません。思想信条はほとんど一緒」と語っていた(『週刊文春』8月3日号)。
文筆家の古谷経衡氏は当時の稲田氏を「ネット右翼のアイドル」と表現する(Yahoo! ニュース個人 7月27日)。しかし、森友学園問題、「自衛隊としてお願いしたい」発言問題、日報問題など、度重なる失態で保守層からの支持も失った。産経新聞とFNNが今月22日、23日に行った合同世論調査では、内閣改造で「代えたほうがよい閣僚」という項目で、稲田氏が断トツの63.1%に上っている(産経ニュース 7月28日)。安倍政権寄りの産経新聞がわざわざこんな項目をつくったのは稲田氏への苛立ちの表れだろう。
「素人を防衛大臣にするな」でブーメラン
冒頭のノンキな発言は、稲田氏が最近、知人に漏らしたという不満とのこと。たしかにかつての発言は強烈だった。安倍首相は稲田氏の鋭い弁舌に惚れ込んだと言われている。野党時代の2011年12月、衆院予算委員会で稲田氏は当時の一川保夫防衛相にこう迫っていた。
「笑わせないでくださいよ。国民目線というのであれば、素人を防衛大臣にしないでほしいというのが国民目線ですよ」(報道ステーション 7月21日)
これがいまや稲田氏自身についての言葉となっているのは誰の目にも明らかだ。防衛相辞任後も日報の隠蔽問題などについての「丁寧な説明」が求められる。それが「国民目線」だ。