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オリックスのキャンプ地・宮崎「SOKKENスタジアム」の由来とは?

文春野球コラム ウィンターリーグ2019-2020

2020/02/19
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「SOKKENスタジアム」の由来とは

 ここまで長々と宮崎キャンプについて、記してきたが、さて皆さんはこの清武総合運動公園のメイン球場の名前をご存知だろうか。その名称はSOKKENスタジアム。何気に見ているだけでは、「ああ、ネーミングライツで権利を購入したどこかの企業の名前だろう」と通り過ぎてしまう、この名称の背景には、今では宮崎市の一部に合併された旧清武町の心意気が表れている。何故なら、この球場の「SOKKEN」という名前は清武町が生んだ幕末の儒学者安井息軒から取られているからだ。

 近代漢学の礎を築いた人物として知られる安井息軒は、江戸にて私塾を開き、多くの門下生を集めた。2000人を超えた門弟の中には、日清戦争時の外務大臣である陸奥宗光や西南戦争時の熊本鎮台司令長官の谷干城、更には日露戦争の参謀や台湾総督として活躍した明石元二郎がいる、というから彼の識見が単に狭く儒学の経典に関わるものであったのみに拘わらず、後の時代にも通用する事がわかる。因みに清武にはこの安井息軒の生家が残されている。清武総合運動公園から国道を宮崎市方面に走らせてすぐの小高い丘の上にあり、立派な記念館も併設されているので、キャンプ観光の途中で訪れてみるのも面白いかもしれない。

 そもそも、我々ファンを待ち受ける観光案内所を出し、いろいろな店を出している人たちもその多くは旧清武町の人たちだ。彼らの暖かいホスピタリティがあってこそ、我々は楽しくキャンプを見る事ができる。その事に思いをはせてみる事も時には必要だと思う。

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 さて、最後に安井息軒が江戸にて開いた私塾の名前は「三計塾」という名前だった。この名前は「一日の計は朝にあり」「一年の計は春にあり」「一生の計は少壮の時にあり」、という彼の信条を基にしたという。「何事を志すにしても、まずその初め、最初が肝心である」、そう述べた息軒の名前を冠した球場で練習するオリックスの選手たちには、まずは「春」からスタートダッシュすることを期待したい。

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