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合コンでライトの当たるど真ん中の席に座れない

──若いのに薄毛だと、精神的に辛いだけでなく、表情も暗かったり、消極的だったりするのではないかと想像するのですが。

佐藤 合コンに行くと、ど真ん中の席には座れないとおっしゃいます。テーブルの真上にはダウンライトがあって、頭がテカテカに光るので、端っこに座るんだって。会話も目の前の女性とは弾まずに、必ず対角線上に交わすことになる。だから、連絡先の交換にまで至らないと。

──対角線上というのは、どういうことですか?

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佐藤 合コンの主役というのは、テーブルの真ん中に座る人たちであって、要するに端っこの人は割り勘係として呼ばれてるんです。だから端っこの人どうしでは会話が弾まず、真ん中に座る人たちの話に入れてもらう感じになっちゃうんです。そんな状況だから、パートナーがなかなか見つからなくて、30代中盤にもなると本当に焦ってきますよね。この方は中部地方の学校の先生で、当初は30代後半だったんですけど、親に40歳までに結婚しなさいと言われて受診されたんです。薬では間に合わないんで、結局、当クリニックで植毛されました。その結果、39歳でギリギリ結婚することができて、「ありがとうございました!」と報告に来てくださいました。

「40歳までに結婚しなさい」という親のプレッシャーに見事にこたえ、39歳でゴールイン。写真提供:佐藤明男

──そうでしたか。やはり、薄毛というのは単なる見た目の問題ではなくて、結婚など、その人の将来に関わる問題でもあるんですね。

佐藤 そうです。パートナーの問題が一番大きいですね。それに40代に入ってくると、家族から「ハゲたお父さんは運動会に来ないで」と言われちゃうみたいなんです。それから50代になると、今度は出世の最終コーナーで差がついてくる。つまり、見た目で差別されてしまうんですね。よほど仕事ができないと、対人関係で損をするんです。もちろん、薄毛の人すべてがそうだというわけではないですよ。でも、私が「いいじゃないですか。ハゲててもかっこいいですよ」と言うと、「先生はハゲてないから、そんなことを言えるんです」と返されちゃう。

「私ももう20年飲み続けてます」

── 欧米なんかでは薄毛の人が多くて、ブルース・ウィリスやショーン・コネリー、ジャン・レノのように、ハゲててもかっこいい俳優がたくさんいますよね。

佐藤 やはり、日本では少数派だから差別されちゃうんだと思います。欧米の白人男性は多くの人がハゲるので、最後はスキンヘッドになって、みんな同じような顔になる。髪のあるほうが少数派なので、逆にハゲてるほうがカッコよく見えるんです。でも、日本人はそんなにハゲる人種ではないので、そうすると薄毛の人がカッコ悪く見えちゃう。

──そのせいか、佐藤先生の著作ではフィナステリドの使用量は世界で日本が一番多いと書いてありましたね。

佐藤 そうです。一時はワールドワイドで日本がトップセールスでした。この薬は副作用が少なくて、ほとんど問題が出ませんし、安全性が十分担保されているいい薬なんです。私ももう20年も飲み続けていますが、何の問題も起こっていません。安全で効果的な薬があるということは、薄毛の方にとって、本当にいいことですよね。

──佐藤先生の著作では、「フィナステリドを飲めば99.7%の確率で脱毛を食い止めることができる」とありました。これは、このクリニックでのデータですよね。

佐藤 はい、最初から一例一例、患者さんに写真を撮らせていただいているんですけれど、7000以上の症例の写真を時系列でずっと記録しているのは、世界でもこのクリニックだけだと思います。この薬を販売している製薬会社の本社の役員も、私のデータを見に、わざわざ米国から日本にやって来ました。

──ただ、99.7%の人に効果があると言っても、全員がフサフサになるわけではありませんよね。

佐藤 ええ。薄毛治療の効果の判定には国際的な基準である「MGPA法」というのがあって、1「著明進行」、2「中等度進行」、3「軽度進行」、4「不変」、5「軽度改善」、6「中等度改善」、7「著明改善」の7段階で評価されます。その客観的な基準に基づいて、4の「不変」以上だった人が99.7%だったという意味です。薄毛は放置していると進行していくので、「不変」でも薬の効果があったと判定されるのです。