女性の「ハゲていても見た目は気にしない」は建前
──いずれにせよ、日本もハゲにそんなに否定的ではなかった時代もあったと思うんですが、どうすれば薄毛であったとしても、コンプレックスを感じずに生きていける社会になるでしょう。もちろん、こうした薬や植毛を進歩させていくことも大切だとは思うんですが。
佐藤 それは難しいでしょうね。ミスコンなんかもなくなりませんし、やはり見た目が重視される社会ですから。たとえば、婚活サイトの方がインタビューに来られたことがあったんですが、「男性がハゲていても、見た目は気にしない」って女性は言うんです、建前では。でも、合コンのリアルな現場では、やっぱりハゲてるとメアド交換までには至りにくい。よほどカネでも持ってないと。カネ持ってないハゲは一番モテないですね。みんな言いますよ、それは。
──やっぱり女性は、ハゲは嫌いなんですかねぇ。
佐藤 そうなんでしょうね。結婚当初はフサフサだったけど、ご主人の頭髪が一線を超えてきたので、「あなた、そろそろ治療したら」と言われて、奥様と一緒に受診された方もいます。奥さんと話していると、「途中でハゲていくのはある程度は我慢できるけど、最初からハゲだったら結婚はしてなかった」って言われました。やっぱり髪がないと、急速に老化していくように見えますからね。
──生物学的には男性として優れているはずなのに、現実には本能を超えたところで女性に品定めされているということですね。僕なんかはハゲてはいませんが、逆に体毛が濃いんです。ヒゲだけでなく、胸毛、腹毛、腕毛とか。それが若い頃はコンプレックスでした。
編集者 高須(克弥)先生に脱毛を勧められてました(笑)。
──製薬会社が髪を増やす薬だけでなく、体毛を薄くする薬なんかも開発してくれませんかね。女性なんかも悩んでいる方が多いじゃないですか。
佐藤 細胞を抑制する薬というのは、抗がん剤と同じで他の細胞も抑制してしまうので、体にあまりよくないんじゃないでしょうか。それより、すでにレーザー脱毛が進歩してるので、それでやればいいんじゃないですか? 安全ですし。
──やっぱ、レーザーですか……。それにしても、女性って平気で男性にキツいことを言いますよね。ぼくも「体毛が濃い人はキライ」って、ダイレクトに言われて、傷ついたことがあります。「キレイなマニキュアしているね」って言っただけで、「セクハラ」って言われたんですが……。
佐藤 女性は、「デリケートなのは女性だけ」と思ってるのかもしれませんね。でも、コンパでハゲだって言われて、ヘコみきって、それから引きこもり気味になっちゃったという人もいます。男性もデリケートなんだって、女性には理解してほしいですよね。
佐藤明男(さとう・あきお)
1957年新潟県生まれ。北里大学医学部卒業。98年、英国オックスフォード大学に留学後、フィナステリドによる薄毛治療を国内でいち早く開始する。これまでに7000人を超えるAGA患者を治療。北里大学医学部寄附講座再生医療形成外科学特任教授なども兼任し、毛髪の再生医療研究にも取り組んでいる。『なぜグリーン車にはハゲが多いのか』(幻冬舎新書)など著書多数。東京メモアリアルクリニック・平山院長。http://www.clinic-hirayama.com/